「日本はヌルい」「課金は青天井」中国系家庭が中学受験に参戦!御三家を目指す理由とは?
近年、中国にルーツを持つ子どもたちが日本の中学受験に挑むケースが目立っている。教育熱心で知られる中国系の家庭が、日本の受験システムに続々と参戦する背景に何があるのか? 中学受験専門塾スタジオキャンパス代表の矢野耕平氏がリポートする。 【画像】「お金のことは気にしない」と言い切る女性 〈前後編の前編です。後編は…東大さえも「踏み台」中国勢が日本の受験に参戦する“真の狙い”とは?〉 ● 5人に1人が中国系のクラスも わたしは東京都世田谷区ならびに港区で中学受験塾を経営し、国私立の中高一貫校を志す子どもたちを日々指導するかたわら、社会人大学院生として博士後期課程に在籍し、言語学の研究に取り組んでいる。 数年前、SNSに送られてきた大学院のゼミ名簿を一瞥(いちべつ)して驚いた。ゼミ生十数人のうち、日本人はわたし1人だけだったのだ。わたし以外は海外からの留学生であり、とりわけ中国系の名前がその多くを占めていた。 そういえば……とここで立ち止まった。自身の生業にしている中学受験の世界でも中国系の子どもたちが増加の一途を辿っていることを改めて感じたからだ。 学校関係者にヒアリングしたところ、東京都内の私立中高一貫校のあるクラスでは、およそ5人に1人が中国にルーツを持つ子どもたちで構成されているという。また、トップレベルの都立高校でも年々、中国勢の占める割合が高まっているそうだ。 日本には82万人の中国籍の人々が暮らしている。日本に帰化した人や、父母のいずれかが中国出身という家庭も含めれば、その数はさらに膨らむ。彼ら彼女たちはなぜ、日本の受験システムに参入しようとするのだろうか。
● 富裕層の教育資金は「青天井」 14歳で中国から日本に移住し、わが子を日本の私立中学校に入れた40代の女性はこう口にする。 「子どもの将来を考えて、中国から日本に移住する人は多い。在日華僑の親世代に根強くある価値観は『教育はスタートラインで負けてはならない』。ですから、幼児教育から力を入れて一流の中高を目指すのです。一人っ子政策の名残もあり、子どもは両親や祖父母の愛を一身に受ける。『小皇帝』とも形容されます」 日本の中学受験はとかく「お金のかかる」世界である。3年間の塾代などの総額は300万~500万円ほど。私立中高一貫校に進学すれば6年間の学費は500万~800万円台、中高時代に塾に通えばその費用も上乗せされる。 それでも女性は、お金のことは気にしないと言い切る。 「目標はいい中学に入ること。そのための予算はいくらまで……という発想がありません。お金をかけるほど合格の可能性が上がるならお金をかけたい。青天井です」 「在日華僑の富裕層には、わが子の教育資金が余って、物足りないくらいの感覚の方も少なくありません。わが子の成績が上がって名門校に合格できるのであれば、いくら積んでも構わないと考えている保護者ばかりです」