スペースXを猛追する宇宙企業、「ロケット・ラボ」創業者がビリオネアに
カリフォルニア州ロングビーチを拠点とするRocket Lab USA(ロケット・ラボUSA)の株価は11月15日に史上最高値を記録し、ニュージーランド出身の創業者でCEOのピーター・ベック(48)がもつ推定資産は初めて10億ドル(約1540億円)を突破した。 政府や商業顧客向けにロケットや衛星などの開発・打ち上げを行なうロケット・ラボUSAの株価は、過去1年間で300%以上急騰した。フォーブスは、ベックが保有する10%の株式が現在約9億7000万ドル(約1500億円)の価値を持ち、これに加えて彼が、過去数年間の株式売却で得た約6500万ドル(約100億円)の資産を保有していると見積もっている。 ロケット・ラボは、13日に発表した第3四半期決算で、第4四半期の収益が過去最高の1億2500万ドル(約193億円)から1億3500万ドル(約208億円)になるとの見通しを示したことで、1日で約30%も株価を急騰させた。同社は、これに加えて2021年から開発を進めている大型の完全再利用型ロケット、ニュートロンを用いた複数回の打ち上げ契約を商業衛星コンステレーション企業と結んだことや、NASAに対して、火星で採取したサンプルを地球に持ち帰る計画を提案したことも発表した。 「ニュートロンはスペースXの競合になることが予想され、経済性を劇的に向上させることが期待されている」と、金融サービス企業キャンター・フィッツジェラルドのアナリストであるアンドレス・シェパードは述べている。 さらに、シェパードは、ロケット・ラボによるロケットの打ち上げ回数はスペースXと中国政府に次いで世界で3番目であることを指摘し、「これらの企業の中で、公開市場を通じた投資ができるのはロケット・ラボのみだ。これが、株価の上昇が続いている主な理由の1つだ」と述べている。 ロケット・ラボの創業者であるベックは、大学には進学せずに独学で航空宇宙工学を学び、1993年にニュージーランドの家電メーカーFisher & Paykelで見習いのエンジニアとして働き始めた。彼は、同社で10年にわたり精密工学や機械設計分野の経験を積む一方、余暇にはロケットの製作を続けていた。 2003年にベックはニュージーランド政府の研究機関に移り、風力タービンや超伝導体の最適化技術に焦点を当てたエンジニアリングプログラムを主導した後、2006年にロケット・ラボを創業した。 同社は、その3年後の2009年にニュージーランド沖から打ち上げたAtea-1を南半球初の商業開発ロケットとして宇宙に送り込んだことで注目を集め、2013年に本社を米国に移し、翌年にはエレクトロンロケットの開発を始動。このロケットは、2017年の初飛行から今年9月までの間に、49回の打ち上げミッションを成功させ、業界最多の197機の小型宇宙船を軌道に投入した。