空ハン協の職場見学会で交流する学生と現役社員＝24年5月9日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

　空港のカウンターや搭乗口で働くグランドスタッフ（地上旅客係員）による旅客サービスやグランドハンドリング（グラハン）事業者が設立した業界団体「空港グランドハンドリング協会（空ハン協、AGHA）」は5月9日、学生向けの職場見学会を初めて開催した。埼玉・川口市の私大学生15人を羽田空港へ招き、全日本空輸（ANA/NH）グループや日本航空（JAL/JL、9201）グループなどの現役社員と交流。深刻化する航空・空港業界の人手不足解消へ、産学連携で働き手の確保を目指す。 【写真】「グッバイウェーブ」を体験する学生 ◆空ハン協会員5社が案内 　参加したのは、同じ学校法人が運営する埼玉学園大学と川口短期大学の学生。両校はグラハン業界へのキャリア支援をしており、学生は2グループに分かれ、第1と第2の各ターミナルをそれぞれ見学した。 　学生へ職場を案内したのは、ANAグループで羽田空港のグラハン部門を担うANAエアポートサービス（ANAAS）、JALグループで旅客サービスやステーションオペレーションを担うJALスカイ、グラハン業務を担うJALグランドサービス（JGS）、スカイマーク（SKY/BC、9204）、羽田タートルサービス（HTS）の空ハン協会員5社。このうち第2ターミナルでは、ANAASの地上係員とグラハンスタッフがターミナルや駐機場を案内し、駐機場では手を振り出発機を見送る「グッバイウェーブ」も体験した。 　各ターミナルの見学終了後は、第2ターミナルにあるANAのオフィスで空ハン協会員5社の社員8人と学生が交流。学生3-4人と異なる会社の社員2人で構成するグループ4つに分かれ、学生は現役社員へ航空業界を目指したきっかけや勉強方法、勤務形態のほか、休日の過ごし方などを質問した。また、ANAとJALがどの程度仲がいいかなど、踏み込んだ質問もあった。各グループからは笑い声が聞こえ、活発な交流が続いた。 ◆見学会で「ミスマッチ解消」 　交流後、取材に応じた埼玉学園大経済経営学部3年の池間佳希さんは「社内資格がたくさんあることに驚いた。勉強しなきゃ」と気を引き締めた。川口短大ビジネス実務学科1年の長岡紗花（すずか）さんは業務の大変さややりがいなどが学べたとし、「スタッフが優しくて、印象深い1日だった」と振り返った。2人とも見学会を通じ、航空業界で働きたい気持ちが高まったという。 　今回の見学会は、学校側から空ハン協へ働きかけ実現した。話しを持ちかけた川口短大ビジネス実務学科の冨吉光則准教授は、見学会は学生が想像する航空業界と現実の「ミスマッチ解消」につながるとし、「現場に行ってみて初めて分かることがあった。学生はこれから徐々に（将来への）意思がはっきりしていく」と手応えを感じた様子で語った。 　空ハン協が学生向けに職場見学会を開くのは、今回が初めて。自身も2年前までANA成田エアポートサービスのグラハンスタッフだった空ハン協事務局の川原鉄平さんは、見学会を通じ「（業界を）学校さんに知っていただく。グラハンの認知度を向上させたい」と述べた。「職種を知らない学生にアプローチする。積極的に連携していきたい」と将来の人材確保へ向け、産学連携を深化させていきたいとした。 　　◇ 　空ハン協は2023年8月25日に設立。人手不足が課題となっていることから、空港業務を安定的に発展させていくために発足し、設立当初は50社でスタートした。現在の会員数は85社で、このうち正会員は73社で、特別会員7社、賛助会員5社で構成する。 　グランドハンドリングは、空港での航空機運航に関する地上支援業務の総称。グランドスタッフによる乗客の搭乗手続きなどの「旅客サービス」、航空機への手荷物や貨物の搭降載、機内清掃などの「ランプサービス」、航空機に貨物を搭載するための調整業務「貨物ハンドリング」、航空機の運航を支援する「オペレーション」などがある。