“有明のり”生産者への不当な取引拘束「やっていない」…漁業団体が公取委「排除措置命令」の“取消”求め訴訟提起
「拘束・排除の事実なし」と主張
今回新たに提起された取消訴訟で両漁業団体側の代理人側は、排除措置命令の根拠となった「拘束条件付取引」について、その要件を満たしていないと主張する。 「拘束条件付取引には、所定の行為類型にあたるかという『行為要件』と、その行為が市場から他者を排除する等の効果をもたらすおそれがあるかという『効果要件』の2つの要件があります。 本件では漁業団体が生産者に対し、のりを全て出荷するよう求め、生産者を拘束していたというのが『行為要件』にあてはまるとされました。 両漁業団体では、毎年漁期のころに、のりの生産者から誓約書を預かっています。今回公取委が主張しているのは、この誓約書によって全量出荷が強制されていたというものです。 しかし、この誓約書はそもそも、全量出荷の強制を目的としたものではなく、のりの生産に使われる『活性処理剤』という薬剤を、過剰に使用しないことを求めるもので、違反した場合には厳しい制裁を行うことも明記しています。 たしかに、誓約書には生産したのりについて、『全量組合に出荷するよう努めます』といった文言が含まれています。ですが、こうした文言は、全量出荷を明確に拘束・強制するものではなく、罰則も設けられておらず、何らかの制裁が行われたという事実もありません。 そして、『効果要件』では、市場から他者を排除するおそれがあるのかどうかが問われますが、本件の場合は拘束がない以上、他者を排除する効果はないものと考えられます。 また、漁業団体が集めたのりは、入札会を経て商社に渡り、そこから消費者に届けられていますが、漁業団体は入札会の運営を行っているだけです。 さらに、生産者が自ら、のりをふるさと納税の返礼品として出品するなど、堂々と平穏に販売されていることからも、両漁業団体による他者の排除は生じえません」(平山弁護士)
「やっていないことはやっていない」
また、平山弁護士は本件を通じて、両漁業団体の取り組みの正当性を主張していきたいと話す。 「入札会では、のりの厳格な品質検査や、正確な等級付けが行われており、そのことが公正な価格形成につながっています。 また、代金清算や事務作業を漁業団体が行うことで、生産者側がのりの養殖作業に専念できるという側面もあり、こうした正当性は十分に評価されるべきではないでしょうか」 排除措置命令の取消訴訟の第一回期日は未定。 「全量出荷を強制した事実などないのに、公取委は『強制を認めればすぐに調査を終わらせる』などと漁業団体側に迫りました。 しかし『やっていないことはやっていない』のですから、取消訴訟を通じて、裁判所に事実関係を説明し、公正な判断をいただければと思います」(平山弁護士)
弁護士JP編集部