火災で全焼の青果店、亡き父に代わりテント営業で再出発 創業95年の思いをつないだ娘たち
県庁に近い長野市妻科の住宅街一角に、テントを張って営業する青果店「荒木商店」がある。店先で、切り盛りする田中喜美子さん(55)と常連客が会話を弾ませていた。 【写真】季節の新鮮な野菜や果物などが並ぶテント内
2022年1月、木造2階建て店舗兼住宅が全焼。田中さんの父の荒木喜太郎さんが経営していたが、火災で亡くなった。86歳だった。火災当日も元気に店に立っていたという。
田中さんは「地域の人たちには怖い思いをさせてしまった。恩返しをしたい」と、1927(昭和2)年の創業から続く店を母の信子さん(80)、2人の妹と再開すると決意。田中さんは保育士だったが、市場の競りにも参加し、火災から約7カ月で仮設テントでの営業を始めた。
地域に愛されていた荒木さんとその思いを継いだ3姉妹の明るい人柄もあり、近隣住民や信州大の学生、長野商業高校や西部中学校の生徒らも訪れ、老若男女でにぎわう。近くの会社員中島亜希さん(42)は「この辺りはスーパーがないので買い物ができることがありがたい。お店をつなごうと協力して頑張っている家族の姿もすてき」。
テントの横にはプレハブの店舗を新設中で、この春オープン予定。店内には休憩所を設け、買い物のついでにお茶飲みや交流を楽しんでもらう。現在のテント形態も客の間で人気があり、残すという。