<甲子園交流試合・2020センバツ32校>天理、晴れやか「やりきった」 広島新庄に競り負け /奈良
2020年甲子園高校野球交流試合第2日の11日、天理は広島新庄(広島)と対戦し、4―2で競り負けた。序盤に相手守備の乱れを突いて1点を先取したが、その後は打線がつながらず、あと1歩及ばなかった。3年ぶりの大舞台を勝利で飾ることはできなかったが、選手たちは「やりきった」と、晴れやかな表情で球場を後にした。【小宅洋介、林みづき】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 先制点を呼び込んだのは下林源太主将(3年)の気合だった。二回裏、2死一、三塁の好機。低めの変化球を空振りするも、ボールは捕手のミットからこぼれ落ち、下林主将が振り逃げ。一塁への送球が乱れる間に、三塁走者の田中勝大選手(3年)が生還、1点目を挙げた。 相手打線も黙っていない。四回表には内野安打や犠飛などで2点を奪われ、逆転を許す。四回裏には相手の暴投で1点を追加し同点に追いつくが、五回表には適時二塁打を放たれ、再び離される。 五回終了までには散発4安打と「強打の天理」らしさは見られない。野球部保護者会長の松尾善徳さんは「いつもより固い印象。後半は天理らしい野球を精いっぱいしてほしい」とその後の試合展開を冷静に見つめていた。 六回裏に庭野夢叶(むうと)投手(3年)が左前二塁打を、七回裏には山地裕輔選手(3年)が中前打を放つも後続打線がつながらず、スコアボードに0が並ぶ展開になった。 八回表、1死三塁のピンチを迎え、内野手全員がマウンドに集まり、それぞれポケットからカードを取り出した。書かれている文字は「喜」。「応援してくれる人を喜ばせたい」という気持ちを忘れないため全員がポケットにしのばせていた。 しかし、そんな思いとは裏腹に、直後に左前適時打を放たれ点差は広がった。先発の庭野投手は九回で降板。「1回しかないけど楽しんでくれ」。継投の達孝太投手(2年)に後を託した。庭野投手の母美沙さんは「みんなに支えられ、ここまで野球ができて良かったねと声をかけたい」と八回まで奮闘したエースをねぎらった。 「3年生の勝ちに貢献するプレーをする」。そんな思いでマウンドに立った達投手。その言葉通り、自己最高球速を更新する143キロの気迫の投球を見せ、打者を3者凡退に抑えた。迎えた九回裏、最終打席に立ったのは河西陽路(ひろ)選手(3年)。「最後の打者には絶対ならない」。思い切りバットを振ったが、投ゴロに倒れゲームセット。 試合後、中村良二監督は「よく頑張ってくれた。3年生にとってはすごくいい最後の試合になった」と選手たちを笑顔でたたえた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇「最高の主将」を超えて 下林源太主将 天理(3年) 九回裏、「悔いなく終わろう」と心に決めて臨んだ最後の打席。強振したバットは低めの変化球を捉えたが、投ゴロに終わった。 2019年秋の近畿大会を破竹の勢いで勝ち上がり、堂々と今春のセンバツ出場を決めた。だが新チーム結成時、中村良二監督は「俺が見た中で一番弱いチーム」と厳しい評価を下した。がむしゃらにチーム改革に取り組み、「みんなも黙々と付いてきてくれた」。 センバツ中止はショックだったが、主将である以上、下を向くことはできない。「一番つらいのはお前や。泣いてもええ」。寮長を務める西尾弘喜コーチに寮の事務所でそう言われ、人知れず涙を流したこともある。 前例のないコロナ禍の中、県独自大会で優勝を果たし、中村監督は「僕以上の主将でしょうね」と下林主将をたたえた。1986年に天理を夏の甲子園初優勝に導き、「天理最高の主将」と呼ばれた中村監督。「最弱チームの主将」は1年かけて「最高の主将」を超えていた。 甲子園では散発6安打と「強打の天理」は鳴りを潜めた。しかし「全員が力を発揮できた」と振り返る。その笑顔は、3年間を共に過ごした仲間と甲子園でプレーできた喜びに満ちていた。【小宅洋介】 ……………………………………………………………………………………………………… 広島新庄 000210010=4 010100000=2 天理