高卒でイングランド挑戦の日章学園FW高岡伶颯が最後の選手権。「絶対20ゴール決めて、この高校生活を優勝という形で終わりたい」
高校から直接、イングランド挑戦。日章学園高(宮崎)のFW高岡伶颯主将(3年=三股町立三股中出身)は第103回全国高校サッカー選手権に出場する選手で最も注目されている存在だ。2007年3月生まれの17歳は今年、U-19日本代表や日本高校選抜に選出。6月にはサウサンプトン(イングランド)加入内定が発表された。 1年時から県大会やプリンスリーグ九州で活躍しているものの、今年のインターハイは直前のケガによって欠場。選手権は過去2大会連続で初戦敗退と全国舞台での活躍をすることができていない。最後の選手権での目標は20ゴール。抜群のスピードと力強さ、跳躍力、技術力でも差をつけるストライカーは誰よりも泥臭く走り続けることのできる才能の持ち主だ。注目ストライカーが、西目高戦から始まる選手権への意気込み、「20」を掲げた理由などについて語った。 【写真】「イケメン揃い」「目の保養すぎ」今季MVPの武藤嘉紀が豪華メンバーで会食 ―選手権予選、抽選会が終わって全国大会が近づいてきているが、今の心境は? 「選手権優勝した時は本当に嬉しかったですし、でもまだまだこれからスタートっていう時に全国の出場校が決まって、抽選会で初戦が西目高校さんに決まった時はよりチームとしても、自分としても気を引き締めて、この選手権の全国までどう準備していくかっていうことをほんとに考えさせられる日々ではありました」 ―抽選会に出たことで、大会の大きさを改めて実感したのでは? 「全国から色々な強豪が集まる中で、色々な選手がいるんで、自分のこの3年間を全国の人たちに知ってもらうためにも、準備していきたいなという風に思います」 ―抽選会で1番多くの記者に囲まれてるのが高岡君だったと思うけれど、やはり注目度は高い。 「3年前とかと比べると、何もなかった自分に注目して頂いて、昨年もそういう感じで色々な方に注目されて応援されていたんですけど、全然結果が出なくて。ほんとに悔しい時期ではありましたけど、それを乗り越えてこその今の自分だと思うんで。それだけ注目して頂いているっていうことを胸に秘めて、ピッチで自分の3年間、今までやってきたサッカーをぶつけていきたいなと思います」 ―高卒で海外に挑戦するということで昨年と違う注目をされているし、背負ってるものも大きいのかなと思うが? 「ありがたいことにプレミアリーグに所属しているサウサンプトンFCに入団することが決まって、より注目は集まったんですけど、それがほんとに嬉しいなっていうのと、もう半分の気持ちはこの期待に応えないといけないなという風に思っています。サウサンプトンFCに行くからって訳じゃないんですけど、世界で活躍するっていうのが目標でもありますし、ワールドカップで優勝するっていうのが夢でもあるので、それを目指している選手に値するという風な評価を、この選手権でも試合を見て頂ければ感じてもらえると思うので、ずっと僕の試合を見ていて欲しいなって思います」 ―高岡君の一生懸命なプレーを見て、衝撃を受けたとか、そういうコメントをよく見るけれど、それぐらい人に影響を与えられる選手に今なってるのかなと思うが 「自分もやっぱ年を取っていく中でサッカーもできなくなっていくと思うので、その次に引き継ぐ小さい子供たちっていうのは、ほんとに今自分が高校サッカーでプレーできてる、サウサンプトンに入団できるっていうところで、今の自分というものを見せて、小さい子供たちに少しでも夢を与えれたらなといういう風に思います」 ―何がそんなに人の心を打つんだろう 「何ですかね。自分の長所というかあまり人はやらないと思うんですけど、泥臭いプレーだったり。本当、泥臭いプレーって一見見られたり、聞くと『そんなんでかよ』って思われるんですけど、そこを自分が突き詰めた中で、シュートだったり、色々な泥臭い中にも工夫がされてるっていうところに惹かれたのかなっていう風には思いますけど、自分の一生懸命してるプレーでいい評価を受けるっていうのはほんとに嬉しいことなので、これからも続けていきたいなって思います」 ―何きっかけでこのプレースタイルが確立されていったのか。 「高校1年生の後半にFWになって、選手権(予選)でハットトリックして、そこからのプリンスリーグでFWという形が定着して。ほんと、そんな器用な選手でもありませんでしたから、本当に頑張る、頑張る、頑張るって感じで、その中で守備だったり、ほんとに貪欲にゴールを狙うっていう中で、泥臭いプレーというのが自分に身についたという風には思います」 ―それは言われて気付いたのか、自分自身で特長なんだなって気づいたのか? 「色々な方から『貪欲で泥臭いね』っていう風に評価も頂いてたので、『自分って泥臭いんだ』っていう。普通にしてたプレーが泥臭いって言われるようになったので、それをこれから武器にしていこうという風に思うんですけど、それだけじゃダメだと思うので、色々工夫して、もっと自分の長所や短所を磨いていきたいなと思います」 ―今日のトレーニングを見てても、トラップなどが上手い。泥臭いが先行してるかもしれないけれど直接FKを決める力もあるし、そういう上手さも高岡君の武器では? 「泥臭いだけじゃなくて、その繊細な部分っていうのも、上に行ったら、プロに行ったら上に行くほど求められてくることですし、泥臭いだけじゃダメなので、その繊細な部分もセンスとかはあるんですけど、自分はほんとに磨いて、いかにゴールと逆算してゴールを狙えるかっていうところで、そのようなタッチとかシュートの技術になっていたのかなと思います」 ―それはもう自分で磨いて、磨いてきた。 「そうですね。色々な環境に身を置いた中で、自分でしっかりこの時はどうしたらいいとか考えるようになったので、チームにいても考えることは多かったんですけど、色々な高校選抜だったり、代表行く中で上手い選手もたくさんいるので、その人の真似とかもしながらという感じで、泥臭いだけじゃないっていうところですね」 ―元々はどんなプレーヤーだった? 「元々はちょっとドリブラー気味の、ちょっと中途半端な感じだったんですけど。中途半端っすね。何かゴールは決めるけど、それまでの知識がやっぱ足りなかったかなというように思います」 ―中学校の時も九州大会で活躍したりしているけれど、当時は今のようなプレースタイルじゃなかった。 「そうですね。でも、ゴールは貪欲には狙いに行っていた方だと思います」 ―予選の自分のパフォーマンスをどう評価している? 「(決勝で)3年連続ハットトリックがかかった中で、最終的にはできなかったんですけど。色んな方が言われてたんですけど、自分はほんと一戦必勝で県予選も勝ち抜いてきましたし、これからもしないといけない。メディアの方からも、色々な関係者の方からも、親戚とかからもハットトリックっていうには言われたんですけど、でも、今まで自分のスタイルはチームが勝つ、点を取るっていうのがずっと小さい頃からありました。ハットトリックも運が良ければできるかなという風には思っていたんですけど、2点決めれて、周りはあと1点だったねって思っているでしょうけど、でも、最終的に勝てることが最優先だったので、そこはほんとにハットトリックできなくて悔しいとかはないですけど、これから全国もあるので、全国でもっと暴れたいなっていう風に思います」 ―最後の3人抜きゴールはかなり話題にもなったが、どう評価している? 「でも、全然自分ではびっくりしないドリブルでもありますし、最後の最後まであそこのドリブルに集中できたというのは、自分の糧というか、凄くいいことでもありますので。集中力を最後まで切らさないという部分では、あのプレーが出たのは本当に頭が凄く働いた1試合になったかなという風に思います」 ―冷静に相手が滑ってくるのも読んで交わして。1人目を抜いて行けると思ったのか、3人目抜いたことでようやく行けるなと思ったのか。 「いや、1人目は結構詰まったんで、でもその中でも抜けれて『良し』と思って、そこから2対1で、サイドからも上村(彩斗)と有働(嵩常)が上がってきてたのが分かっていたんで、そいつらのお陰でスペースが空いたっていうのもあったんですけど、そこは1人目抜いてから、もうこれは行けるっていう風に確信しました」 ―ゴール決めた後、凄く嬉しそうだったので会心のゴールだったのかと。 「いや、2点目だったんで、またあと1点行けるかなと思ったんですけど、あそこで満足してるので、まだまだの選手だなっていう風に自分でも実感しました」 ―選手権は日章学園での3年間の集大成になるが、個人としてはどういう3年間だった? 「ほんとに苦しい時期もありましたし、インターハイの1年生の時の(予選)決勝などは出れなくて悔しい思いをしたんですけど、そこからほんと今までと違う自分というか、もう絶対這い上がってやろうという気持ちから、今のような代表だったり高校選抜、色々なチームに携わらせて頂いて、ほんとに感謝してますし、自分がやってきたことは間違いないという風に思っています。名和田我空(神村学園)にも色々な刺激をもらってほんと感謝ですが、これからも刺激し合う仲でもあるので。この3年間は本当にキツかったですけど、ほんとに幸せな時間でもありましたので、活躍できるようにまた修行したい。今はまだ選手権が、最後の大きな大会が残ってるので、そこで3年間の集大成を見せれたらなって思います」 ―この3年間、自分にとって1番デカい壁は何だった? 「1年生の頃のインターハイ(予選)が、 やっぱ中学校でいつもメンバー入れたのに、(日章学園は)やっぱ強豪ってだけあって入れなくて、何で入れないんだっていう風に考えた時に、まだまだ未熟な自分がいたので、それを考えて、そこからほんとに変わって。インターハイ決勝は出れなかったんですけど、全国大会はメンバーに入って出場することができて、1得点という形で終わりましたけど、 ほんとに自分が変わる期間でありました」 ―入学直後にそれを感じられたのが大きかった。 「そうですね」 ―スパイクについて教えて下さい。今履いているのがアディダスのF50。去年のXと変えた理由はある? 「自分は軽さとかキックの質の良さとか重視したので、Xも本当いい履き心地で何も不備なくプレーできたんですけど、それ以上に軽いF50というのが出て、それがフィットして今、F50を履いているっていう感じです」 ―よりスピードをスパイクに求めた。 「そうですね。足に重さ、足に乳酸を溜めないためにも軽いスパイクっていうのを重視して、なおかつこのアディダスのデザインが好きだったので、今F50、これからもアディダスを履き続けたいなという風に思います」 ―F50を履くことで、自分のどういうところを引き出された? 「色々なスパイクを履いてきて、色々足に合わないこともあったんですけど、アディダスさんも最初は慣れない時があったんですけど、履いていくうちに凄くフィットするなっていうような感覚ができて、そこからずっとアディダスを履いているという形です」 ―ドリブルのスピードだったり、抜け出しのスピードとか、そういうところに影響がある。 「もうそこも不備なく、何ももうスパイクのことを気にしないぐらい軽やかにプレーできるようになりました」 ―シュートのインパクトだったり、シュートの質だったりはどうかな? 「素足感覚なんで、自分の足を信じてというか、ほんとに自分が打ちたい方向にも打てますし、軽いので、自分の振りというのが凄く出るようなスパイクです」 ―走っていてもよりスピード感を感じる? 「感じますね。もう次の1歩が速く出るというか、ほんとに軽いので、スプリントも凄く速くできますし、ボールを引き出すトラップも。ほんとにトラップやシュートも素足感覚で凄くいいスパイクだと思います」 ―この選手権で、このスパイクで、大目標掲げてますけども、どれぐらいのゴールを 「僕のゴールですか。それは20ゴールです」 ―改めて、その20っていう数字を掲げた理由を教えて下さい 「昨年、(初戦敗退をして)本当悔しい思いして、原(啓太)監督からも日本一の選手という風にはおっしゃってもらってたんですけど、それでも全然結果が出なくて、1ゴールすらできなかったという自分に対しても、この1年間準備してきたぞという風な意味合いでも20得点ですし、今の自分の自信からも20ゴールに決めています。20ゴールって無理だろとか色々な人に思われると思うんですけど、それがほんとに嬉しいことですし、何か言ってもらえる方がいい。5ゴールとか得点王じゃない点よりは、もう大迫勇也選手(2008年度大会で10ゴール)の倍を行く20ゴールを決めて、色々な人の見られ方がありますけど、それほど自分が今、自信があると全国に知らせたかったというのもあるので、それで20ゴールにしました」 ―身近な人の反応はどうですか? 「いや、笑ってるっすよ。笑ってるっすよ、『20?』って。でも『頑張れよ、20』っていう感じで、『20ゴール(決めろよ)』って言われるんですけど、色々な人に」 ―どの試合もシュート10本とか打てる選手なんで、本当に可能性があると思う。違いを見せれる選手だってところを証明して欲しいが。 「そう思ってもらえるのも嬉しいし、『もう絶対やってやる』っていう気持ちなんで、言ったからには絶対20ゴール決めて、この高校生活を優勝という形で終わりたいなと思います」 ―サイズが特別デカい訳でもない。小中学生にも刺激を与えるだろうし、自分への期待感もあるんじゃないかな 「サイズは小さいですし、大迫勇也選手みたいに大きい選手じゃないんで。でも、自分の足(スピード)だったり、ヘディング、身体全体に秘めてるインパクトというものは、いくら大きい選手でも叶わないインパクトを持っているので、小さい子供とか、小学生、中学生、全国の皆さんに、この小さくても点を決めれるっていう風に、夢と希望を与えたいと思います」 ―名和田君の話が出ましたけども。現時点でちょっと話はできた? 「ちょっと話したんですけど。『また、これから頑張ろう』っていう風に言ったんすけど、 『選手権、頑張れ』って言ってきてくれたんで、吹っ切れてはないと思うんですけど、あいつも次のステップもあると思うので、ほんとこれからも刺激し合える仲になりたいなというよりは、ほんとに何て言うんすかね……もうライバル以上の関係というか。小さい頃から知ってるので、もっと自分の評価高めて我空を刺激したいですし、我空もそれに食らいつくようなこともしてくると思うんで、もうそこはお互い常に意識して過ごしていきたいです」 ―宮崎県の同じ地域出身。小学3、4年から彼のことを知っていた 「知ってます」 ―当時から彼を追う立場だった 「そうっすね。我空は小学3年生から4年生の頃に6年生の試合出てたんで、『いや、凄えな』というような感じは持ってたんですけど、まさか中学校入っても活躍して全国優勝っていうような感じで。で、僕は九州3位で『何してるんだ』っていうような気持ちにもさせられましたし、代表活動行っているっていうのもネットとかで聞いてたんですけど、僕も昔だったら代表行けるとか全然思ってなかったんですけど、我空がいたからこそ代表に行けるようなメンタルにもなりましたから、ほんとに感謝ですし、これからも刺激し合いたいなと思います」