<私の恩人>テンダラー浜本広晃、たけしさんの言葉に欲深い自分を思い知った
漫才をやるって、ホントに地味な作業なんです。コツコツとネタを作って発表して、また1週間くらい経ったら次のネタを作ってという作業を延々繰り返す。結果が出ないと、なかなかにしんどい。今まで、笑い声という“光”だけを頼りに手さぐりで歩いてきたところに、大きな声で「君らは間違ってないよ」と言ってもらったような感覚でした。 さらに「北野演芸館…」の収録の時も、言葉をちょうだいしたんですよね。雑談の流れで、ポツリとおっしゃたんです。 「アンチャン、あと、欲しいのは名声とかそういうもんだろ。そんなもんはな、ちゃんと漫才やってるんだから、別にいいじゃねぇか」 そもそも、この世界に入った時の核になる気持ちは「目の前の人を笑わせて、何とも言えない幸せな気持ちになって、それでお金がもらえる。こんな素敵なことがあるなんて」ということやったんです。それを改めて思い出しました。いつの間にか、いろいろなところに目移りをしてしまってたんやなと。 だから、その言葉をいただいてから、思考回路がガラッと変わりました。漫才をやって、認められて、テレビに出るという考え方ではなく、漫才がゴールになりました。テレビに出るのも漫才のため。劇場に来てくださったお客さんが「あ、この人、あの番組で見たわ」と思ってもらった方が少しでも楽しんでもらえるし、漫才も笑ってもらいやすい。そのためのメディア的なお仕事やと考えるようになったんです。 たけしさん、今、67歳ですか。その年になって、まだ僕がキレキレに動けてたら、それはそれでおもしろいですよね(笑)。そうできるようにジム通いを欠かさず、頑張りたいと思います。この先も、お客さんに、そして、たけしさんに笑ってもらいたいですから。 ■浜本広晃(はまもと・ひろあき) 1974年2月15日生まれ。大阪府堺市出身。大阪・難波のショーパブ「アランドロン」で働いていた浜本が同僚の白川悟実を誘い、94年にコンビ結成。コンビ名の表記は結成以来「$10」だったが、2009年に「テンダラー」に変更した。2011、12年とフジテレビ系「THE MANZAI」で決勝進出を果たし、一躍ブレイク。翌13年には、上方漫才大賞奨励賞を受賞。関西テレビ「マルコポロリ!」、毎日放送ラジオ「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」などに出演。初の全国ライブツアー「テンダラー JAPAN TOUR」は来年1月25日の大阪・なんばグランド花月公演からスタート。以後、福岡、広島、徳島、愛媛、名古屋、石川、新潟、東京と全国9ヵ所で開催される。また、米ロサンゼルス公演やこれまでの漫才を収録したDVD「テンダラー BEST MANZAI HITS!?~THIS IS TEN DOLLAR~」も来年2月4日にリリースされる。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年、大阪府生まれ。大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」などに出演中。