Game*Sparkレビュー:『ドラゴンズドグマ2』には“不便で刺激的”な自分だけの冒険が詰まっている! 12年ぶりに蘇る共闘の楽しさに偽りなし
カプコンが手がけたオープンワールド・アクションRPG『ドラゴンズドグマ 2』が3月22日に発売を迎え、今も多くのユーザーが広大な冒険に熱中しています。 【画像全19枚】 同社の代表的なシリーズといえば、いずれも昨年末時点のデータとなりますが、総販売本数が1億5,400万本にのぼる『バイオハザード』シリーズをはじめ、ハンティングアクションを切り開いた『モンスターハンター』シリーズ(9,700万本)、対戦格闘ゲームの雄『ストリートファイター』シリーズ(5,300万本)など、枚挙に暇がないほどです。 今回最新作が登場した『ドラゴンズドグマ』シリーズの場合、これまで13タイトル(ハード別に集計)が展開しており、総販売本数は840万本になります。タイトル数がそれぞれ異なるので単純な比較はできませんが、近しい数字を拾うと、11タイトルの『大神』シリーズは400万本、16タイトルの『鬼武者』シリーズは860万本と、他のシリーズに負けない人気を有していることが分かります。 このように『ドラゴンズドグマ』シリーズは確かな支持を集めていますが、一方で展開に関しては長い空白期間もありました。1作目の『ドラゴンズドグマ』が2012年5月に発売され、その翌年には拡張版の『ドラゴンズドグマ:ダークアリズン』も登場し、好評を博しました。 ですが、シリーズ展開はここから方向性が変わり、ジャンルが異なる『ドラゴンズドグマ クエスト』、オンライン専用の『ドラゴンズドグマ オンライン』と、様々なチャレンジを見せるものの、「オープンワールド・アクションRPGかつシングルプレイ」といった『ドラゴンズドグマ』の特徴をそのまま受け継ぐ作品は現れないまま、10年以上の時が過ぎていきます。 そうした沈黙を経て、1作目の発売から約12年が経った今、ファン待望の『ドラゴンズドグマ 2』が無事発売を迎えました。しかし待ち望んだ時間が長い分、その期待を超えてくれるのか、不安に思う人もいるでしょう。また前作未経験のユーザーも、そんな古い作品の続編が楽しめるのか気になっている人も少なくないはず。 そこで今回は、『ドラゴンズドグマ』に熱中したファンである筆者が、本作『ドラゴンズドグマ 2』を50時間ほどプレイした実体験を通じて、その魅力と難点に迫るレビューをお届けします。『ドラゴンズドグマ 2』を遊ぶかどうか悩んでいる人は、ぜひご覧ください。 なお『ドラゴンズドグマ 2』は、PS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに発売されていますが、今回プレイしたのはPS5版となります。 『ドラゴンズドグマ 2』の本質が問われる、前作の特徴と不満点 前作『ドラゴンズドグマ』が発売された当時は、オープンワールドRPGの人気が高まりつつあるものの、戦闘はシンプルなものが多く、昨今のような豊かなアクション性を持つオープンワールド作品は乏しい状況でした。 そんな折に登場した『ドラゴンズドグマ』は本格派アクションゲームさながらの動き、小気味よい攻撃の手応え、隕石を降らす大魔法などの要素を揃え、「オープンワールドで、しかもバトルが面白い!」といった異例の評価を博しました。 また、もうひとつ大きな特徴として注目を集めたのが主人公の「覚者」に従う半人「ポーン」の存在です。ポーンは世界観にも深く関わりますが、プレイの上でも重要な存在で、AIが動かすポーンたち(最大3人)と共に世界を駆け回り、戦闘に挑むことができます。 シングルプレイのオープンワールド作品は、今現在も「ひとりきりの冒険」がほとんど。誰かと一緒に旅をして共闘する楽しさは、オンラインを介するマルチプレイが主流です。しかし『ドラゴンズドグマ』は、誰かと共闘する楽しさと、誰にも気兼ねせず気ままに遊べるシングルプレイの手軽さを「ポーン」によって実現させました。 こうした『ドラゴンズドグマ』が持つ特徴を、果たして『ドラゴンズドグマ 2』は無事に受け継げたのでしょうか。 ポーンとの共闘は、今も変わらず楽しさ 本作を50時間プレイした上での印象としては、その特徴を継承しつつ、しっかりとパワーアップした実感を覚えました。 弓と短剣がそれぞれ別ジョブになるといった一部変更も踏まえつつ、新ジョブも加わり、戦いの幅がよりパワーアップしています。近接職は今回もアクション性が高く、守りと攻めを両立するファイター、一撃の重さにロマンを感じるウォリアー、素早い連撃と高い機動力で爽快感満点のシーフなど、いずれも異なる楽しさがあります。 遠距離職も、特別な矢を使い分ける戦略性を持つアーチャー、攻撃と治療の魔法で幅広く支援するメイジ、攻撃魔法に特化したソーサラーと、こちらもジョブごとに立ち回りが変わり、転職するたび新鮮な気持ちでバトルに臨めます。 さらに複合職のマジックアーチャー、魔剣士、幻術師が加わる上に、全ての武器を扱える究極のジョブ・アリズンも用意されているので、自分好みに戦えるジョブを誰でも見つけられることでしょう。 また立ちはだかる敵も、「個々の強さは程度が知れているが、集団で来るので侮れない」「ジョブによっては手を出しにくい、飛行する敵」「見上げるほどの体躯を持つ巨大なモンスター」「出会った途端に逃げ出したくなる、恐ろしげなドラゴン」などガラッと変わるので、その面子によって戦い方も変化します。そこにジョブの多彩さが加わるため、戦闘の楽しさが維持され、飽きにくい作りになっていると感じました。 モンスターの種類自体はそれほど多くないものの、戦い方のバリエーションが広いため、戦闘自体にマンネリ感はありません。しかし種類があればあるほど楽しさも増すので、惜しい点とも言えます。 ポーンたちがいることで、戦いは自ずと乱戦になります。特に敵が群れている場合はあちこちで個々の戦いが発生し、そこでポーンたちの行動を把握しようと思うと、かなり忙しいプレイになります……が、あまり心配する必要はさほどありません。 戦いにおける“ポーンの頼もしさ”は前作で経験済みですが、本作でも十分通用するレベルです。もちろん、それなりに攻撃を食らってHPも減りますが、例えばHPを魔法で回復できるメイジのポーンがいるだけで、継戦能力は大きく上がります。また、敵を殲滅する力も相応に備わっており、覚者が棒立ちでも勝てることすらあります。 仮にプレイヤーがミスして敵から攻撃を食らっても、そのピンチに駆けつけて敵を叩きのめすといった活躍も多く、背中を預けられるほどの安心感。敵が多いと乱戦になりがちですが、ポーンがしっかり戦力になってくれるため、バトル全般で頼もしさと楽しさを味わえます。 ポーンと共に挑む戦闘は前作の時点で確立されていましたが、その楽しさは令和の時代でも十分通用する要素でした。仲間との共闘は、時代を経ても通じる魅力。『ドラゴンズドグマ 2』は、その楽しさを見事に証明してくれました。 <cms-pagelink data-page=”2” data-class=”center”>オープンワールドの魅力も増すものの、不便なシステムも目立つ</cms-pagelink> 本作のオープンワールドは懐が深く、ゲーム体験に深みを与える より豊かになったアクションの幅と、今も変わらない共闘の頼もしさと楽しさ。前作の魅力については、十分以上に受け継いでいます。ですが、もうひとつ避けて通れないのが、オープンワールドに関する手応えです。 プレイした人は経験済みかと思いますが、前作の『ドラゴンズドグマ』のオープンワールドは作り込みこそ悪くなかったものの、「広がり」と「探索」は正直物足りない仕上がりでした。フィールドの広がりが限定的で、そのため探索要素も必然的に少なめ。バトルやポーンなどの魅力を備えていただけに、「世界の狭さ」は実に残念でした。 そんな前作を経験した身で言えば、『ドラゴンズドグマ 2』のオープンワールドは、期待を上回る仕上がりになっています。まず、単純な意味での広さが大きく改善され、50時間のプレイを探索に充てても、マップの判明範囲はようやく折り返しを迎えた程度。まだまだ先が見えず、嬉しい悲鳴を上げている状態です。 しかも、ただ広いだけではありません。敵とのエンカウントだけでも、通常の遭遇に物陰に隠れた奇襲、モンスターが豚や牛を狩る現場に遭遇するなど、そのシチュエーションはかなり豊富です。中には、牛車で移動中に襲われたり、戦闘中に別のモンスターから強襲を受けるといった状況もあります。 また、普通の攻撃だけが敵を倒す方法ではなく、高所から落としてダメージを与えたり、深い水場に放り込んで即死させる、といった地形を活かした立ち回りも有効です。小型のモンスターなら捕まえて投げ飛ばせますし、大型も揺らして体勢を崩させるという手があります。 さらに本作では、「吊り橋を落として落下させる」「大岩を転がして坂の下にいる敵を轢く」「せき止められた川の水を放流してダメージを与える」といったアクションも可能。こうしたギミックがフィールド上に組み込まれており、『ドラゴンズドグマ 2』のオープンワールドには懐の深さを感じざるを得ません。 そして、本作が備えるオープンワールドの楽しさは、バトルだけでなく豊富な探索要素にも支えられています。初見の土地を探索すると、素材の獲得をはじめ、宝箱や貴重なアイテムの発見、多数のダンジョンといった出来事が次々と舞い込み、手が空く暇もないほど。探索すればするほど、新たな発見と出会えます。 ちなみに、メインストーリーの進行に伴い、関所を通って隣国に足を運べるようになりますが、実はそれ以前から自力で隣国への移動が可能です。筆者の場合は川沿いを進み、状況的には密入国のような形で往来しました。探索できるフィールドにゲーム的な制限を設けず、プレイヤーの裁量に任せる本作の作りは、個人的に嬉しいポイントのひとつでした。 前作よりも格段に広くなり、フィールドを活かしたバトル要素や密度の濃い探索要素が、広大な世界の旅路にメリハリを与えてくれます。広さに加えて深さも備えた『ドラゴンズドグマ 2』の冒険は、期待以上のオープンワールドを実現していました。 不便な作りも目立つが、ゲームデザインを踏まえた一面も ここまでは、前作から引き継いだ特徴や昇華した魅力について触れましたが、『ドラゴンズドグマ 2』は全く不満のない作品……ではありません。まずフレームレートが高いとは言えず、人によっては3D酔いに繋がります。ただし、今後のアップデートでフレームレートの向上が図られる予定なので、この点はカプコンの対応に注目しておきましょう。 また、UI全般が使いにくかったり、重量制限が厳しかったり、ファストトラベルの選択先が限られていたりと、システムからゲーム性まで不便な面が目立ちます。こうした利便性の低さが気になる人は、本作に対する評価がどうしても低くなることでしょう。 こうした不便について、「それも楽しむゲームだ」とは言いません。快適でない点はやはり気になりますし、無理に我慢をする必要もありません。ですが、現状で感じる不便のいくつかは、単なる配慮不足や洗練の足りなさではなく、意図してデザインされている面も否定できません。 例えばファストトラベルは、安価だが選択先が限定的な牛車や、貴重で高価な「刹那の飛石」が必須だったりと、それぞれ制限を抱えています。また探索中に、一度街へ戻ってから再開しようと思った時、貴重なアイテムを使わない限り、その往復のほとんどは徒歩による自力移動になります。これを面倒と考える人がいても、なんらおかしくありません。 ですが、本作は道を歩いているだけでも様々な出来事に遭遇し、探索の幅を広げれば容易に新たな発見が訪れます。おそらく本作は、移動を「冒険」として捉え、そこに発見と驚きを積み重ねるゲームデザインを構築したのでしょう。 移動による「冒険」との遭遇は、ファストトラベルでは得られない楽しさです。そのため、フィールド上で展開する「冒険」と遭遇できるよう、ファストトラベルの使い勝手を調整したのかもしれません。 UIについても、ゲームデザインを踏まえた可能性があります。アイテムによるHP回復がやりづらいのは、ポーンが回復をサポートすることで、その連携を実感しやすくするため。重量制限の厳しさも、こまめに街に戻らせ、ジョブの成長を実感させたり、クエスト受注の機会を増やすため。そうした推測も成り立ちます。 フレームレートなどの欠点でしかない問題は別として、使いにくいシステム上の不満点は『ドラゴンズドグマ 2』のゲーム性に触れやすくするため、敢えて不便なデザインに留めているとも捉えられます。 あくまで主観的な意見ですが、探索好きが功を奏したのか、ファストトラベルの使いにくさはあまり不満に感じていません。「刹那の飛石」は貴重ですが、プレイを続けていけばいくらかは溜まるので、いざという時に使う分は十分あります。 UIの使いづらさは改善して欲しいものの、HP回復などはポーン頼りで大きな問題はなし。手ごわいモンスターとの戦いでも、回復を促す指示を行うなり、自分がメイジになって回復役に回るなり、ある程度のカバーが可能です。そのためUI自体は不便ながら、ゲームデザインが補っている面も一部あります。 ポーンが勝手に行動してしまう「竜憑き」といった、ゲームデザインに含まれているものの不便さが過ぎるケースもありますが、不便に感じる要素の多くはゲーム性に誘導する兼ね合いの上に成り立っていました。 ゲームプレイは快適に越したことはなく、その意味では『ドラゴンズドグマ 2』は“品行方正”とはかけ離れています。しかし、オープンワールド作品の全てが行儀よくなってしまったら、似たような作りばかりで味気なく感じるかもしれません。 ファストトラベル要素の牛車は、敵に襲われることが多く、時には目的地につく前に荷台が破壊されることもあります。利便性だけで言えば、かなり不安定で困った代物です。しかしゲームの体験というのはおかしなもので、そんなハプニングを面白く感じ、記憶に残る場合が多々あります。 品行方正ではないからこそ広がりが生まれ、様々なゲームスタイルを受け入れる土壌を育んだ『ドラゴンズドグマ 2』。“行儀の良さ”より“多彩な体験”を選んだであろう本作は、減点方式だと総合評価が下がり、加点方式だと名作と成り得る魅力を秘めた作品と言えるでしょう。 総評:★★☆ 良い点 ・手応えのあるバトルをポーンと一緒に立ち向かう、共闘の楽しさは不変 ・ジョブの組み合わせで広がる戦略 ・前作の不満点だったオープンワールドの魅力が格段にアップ ・ハプニングやアクシデントが頻繁に起き、プレイ全般にメリハリがある 悪い点 ・人によって好みが大きく分かれるゲームデザイン ・ゲーム性への誘導といえども、不便な部分はやはり目につく ・フレームレートの改善が当面の課題 「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。 このレビューでは、3段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。最低評価は「難アリ/オススメできない」、中評価は「ふつう/そこそこオススメ」、最高評価は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。 「Game*Sparkレビュー」は「PR記事」と一切の関係を結ばず、すべての評価内容がライターの価値観に基づきます。特定の企業やプロモーション、ユーザーコミュニティにも影響を受けません。 マルチプラットフォームで展開されている作品においては、対応している機種のうちのひとつのエディションのみをプレイし、評価します。そのため、本文内でプレイした際の使用機種についても明記しています。
Game*Spark 臥待 弦(ふしまち ゆずる)
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