誰も見たことがない本殿・拝殿を。伝統技術でつくる、あたらしい〈鳥飼八幡宮〉
「まるで神事のよう」だった、茅を葺く作業風景
高野さんはこういいます。「『難しいから』で諦めてしまったら、その技術は本当になくなってしまいます。わたしたちは、難しくても、職人さんたちが技術を継承していけるような環境を、なんとかつくっていきたいのです」 拝殿に使用した茅葺は、20~30年で傷み、葺き替えることになります。鳥飼八幡宮は、今後、遷宮のタイミングに合わせ、茅の葺き替えを行う計画になっているとのこと。 そのサイクルがうまくまわれば、茅葺の技術継承だけでなく、茅場の保全にも繋がってゆくはずです。 ■茅を葺く作業風景は、まるで神事のよう 工事期間中、印象的だったできごとを二宮さんに尋ねると、こんな答えが返ってきました。 「完成前の拝殿の中で、職人さんたちに作業をしてもらっていたんです。それがすごく静かで、まるで神事のようだったのが心に残っています。職人さんたちが、茅を受け渡したり、束ねて切ったりする時に、『フサッ』とか『シャクッ』とか、そんな音だけがここに流れていて。これは神様に納める仕事なんだ、ということを体感できた風景でした」 これほど大きな壁を茅で葺く建築物は、日本には滅多にありません。「職人さんは日々、頭を悩ませながら作業されていたと思います」と二宮さんはふりかえります。 「この現場にかかわるすべての職人さんが、自分の持てるベストを尽くそう、という意識で仕事をされているのが伝わってきました。職人さんたちのそういった思いが重なって、いいものができたのだと思います」 拝殿の完成後、参拝された方が茅葺壁に触れたりしている様子を見て、二宮さんはあらためて、「茅にしてよかった」と感じているそうです。 ■地域の人々の、心のよりどころでありたい 年内で、鳥飼八幡宮の遷宮はほぼ完了の予定だそう。これから神苑が整えられ、スロープが整備され、新しい神楽殿が建ち、参拝する方が歩きやすく、より過ごしやすい環境が整えられてゆきます。 「もっと人々がくつろげるように、イベントやお祭りで気軽に集まってもらえる場所にできたら」と高野さん。 「地域の人々の、心のよりどころであり続けたいですね。このあたりは転勤族が多い地域ですけれど、そういった方たちにも、いつかまた帰ってきたい、と思ってもらえるようなまちづくりに関わりたいなと」 この日の境内には、ベビーカーを押したお母さんや、お年を召したご夫婦、いつもの散歩ルートという風情の男性、どこかへ行く途中なのか、大きなリュックを背負った女性の姿もありました。 神社は、時に1000年以上もの歴史を持ち、神様を祀る神聖な場でありながら、いつも誰にでも開かれていて、行くとなぜかほっとする、不思議なところです。 大きく姿を変えた鳥飼八幡宮ですが、これからも、人々の祈りの場であることに変わりはありません。 鳥飼八幡宮は、歴史や伝統と、未来とを「むすぶ」場所。 今日も鳥飼八幡宮の周りには、たくさんの人々が、にぎやかに行き交っています。 information むすびの神 鳥飼八幡宮 住所:福岡県福岡市中央区今川2-1-17 電話番号:092-741-7823 Web:鳥飼八幡宮 Instagram:@torikaihachimangu.official writer profile Aya Kinoshita 木下 綾 きのした・あや●福岡生まれ・福岡在住。フリーライター/ウェブデザイナー。2015年より大牟田市動物園を勝手に応援するフリーペーパー「KEMONOTE(ケモノート)」を制作。趣味はアウトドア、日記。カレーとコーヒーが好き。 【コロカルニュース】とは? 全国各地の時事ネタから面白情報まで。コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。