子どもの近視を抑制するのは意外と簡単だ ――身体機能を取り戻すカギは「自然」にあり
■「近視は遺伝」と思われていた 春山:なるほど。先生は著作の中で「目は臓器である、脳の一部である」と書かれています。そこまで大事な臓器である目のケアが、日本でここまで関心が持たれていない現状には社会的な背景があるのでしょうか。 窪田:日本ではこれまで近視は医学的に「屈折異常」と呼ばれ、病気として捉えられてきませんでした。病気ではないため「治療の施しようがない」「眼鏡などの矯正器具をつけましょう」という流れだったかと思います。
「近視は遺伝」と思われていた時代も長かったですね。「近くでテレビを観続けると目によくないよ」「遠くを見ると目にいいらしいよ」と世間では言われ続けていました。そして、その科学的根拠が明らかにされ、国民に周知されるのも遅いと感じています。 春山:歯に関しては、家庭以外でも、園や学校で「歯を磨くように」と散々言われています。歯を磨けば虫歯や口の中の病気を予防できることは子どもでも知っています。ですが、目に関してはあまり聞いたことがないですね。
窪田:これは歯科医の先生方が、子どもやその親たちの啓発に昔から力を入れてきたからです。歯に関する子ども向けの絵本も多いですしね。台湾をはじめ、中国では国をあげて近視抑制に乗り出し、子どもや親だけでなく教育機関をも巻き込んで啓発を一気に広げました。 日本でも文部科学省がホームページで、子どもたちの近視有病率が過去最悪で、それを食い止めるためにも1日2時間程度の外遊びを推奨する文言の掲載はしています。ですが、その情報が教育現場や子育ての現場でまだ周知されていないように感じています。
■人間の身体機能の退化をどう取り戻すか 春山:人間が太陽光を浴びて身体を動かすという、原始時代からの変わらぬ身体の使い方がやはり健康にいいという考えは、私たち「ヤマップ」も同じ思いを持っています。 私たち人間の手は、パソコンを打つために、スマホをいじるためにできたのではありません。自然の中で歩いて食料を取ったり生活したりするためにこの身体に進化したわけです。人間の今までの進化と昨今の道具の進化スピードの乖離に危機感を持っています。