バイナンスのジャオ氏と「ボーダーレス」暗号資産企業の終焉
11月21日はひとつの時代の終わりを告げる日となった。バイナンス(Binance)のチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)CEOは辞任し、バイナンスはアメリカの取引所ではなかったにもかかわらず、アメリカのアンチマネーロンダリング要件に違反したことを認めた。これにより、「ボーダーレス」な暗号資産(仮想通貨)企業の神話は真に終わりを告げた。
所在地という概念
確かに、アメリカの法執行機関がアメリカ国内に拠点を持たない暗号資産取引所を摘発したことは今回が初めてではない。FTXもそうだった。しかし、バイナンスほど「ボーダーレス」神話を体現した企業はない。バイナンスはまた、米司法省と和解するために43億ドル(約6450億円、1ドル150円換算)の罰金を支払うことになっている。 バイナンスは伝統的な企業の枠を破った。世界中、あらゆる場所のトレーダーにサービスを提供し、最終的には世界最大の暗号資産取引所となった。だが長い間、その所在地を知る者はいなかった。本社を置くという発想そのものがバイナンスのアイデンティティに反していた。 2018年、私は「CZ」ことジャオ氏に本拠地を尋ねた。「人々はまだ、会社がどこにあるのか、自分がどこにいるのかという、本当に強い概念を持っている」と彼はその時、私に言った。「会社とは概念だ。組織も概念だ」と。 どこがホームかと尋ねると「それに対する答えはない。地球?」と答えた。 バイナンスは、そのはるかに小さな米国法人であるバイナンスUS以外には、アメリカに拠点を置いていないことを強調していた。CZが最後にアメリカで公式に姿を現したのがいつか、私には思い出せない。しかし、バイナンスは明らかに、アメリカの法律の適用を免れることができなかった。 アメリカはバイナンスを、適切なアンチマネーロンダリング(AML)プログラムを持っていないこと、無認可の送金ビジネスを運営していること、制裁法に違反している罪で告発していた。 「バイナンスが世界最大の暗号資産取引所となったのは、同社が犯した犯罪のおかげでもある。そして今、アメリカの歴史上、企業にとっては最大規模の罰金を支払うことになった」とメリック・ガーランド(Merrick Garland)司法長官は語った。 米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)もバイナンスに対して執行措置を取った。彼らの主張は、バイナンスがアメリカに顧客を抱え、それらの顧客にアメリカの規制を回避する方法を伝え、アメリカの規制当局からその活動を隠す手段をとったというものだ。