川端康成「ノーベル文学賞」から3年半後の悲劇…自死したマンションの住み心地を購入女性が語る
「売りに出るなんて滅多にない」と言われ
2019年に地元の不動産会社が買い取り、2年前に鎌倉市在住の60代の女性が購入する。そこで当の女性に、文豪の最期の部屋を買った経緯を聞くと、 「まさか川端さんが亡くなったマンションを私が手に入れることになるとは思いもしませんでした」 との答え。聞けば川端作品の熱心なファンというわけではなかったという。 「もともと別荘用に逗子マリーナの部屋を探していたのですが、空き室が出たというので見に行ったら川端さんが自死した部屋であることを告知されたのです。最初は悩みましたが、知人から“日本を代表する文豪の部屋が売りに出るなんて滅多にないよ”と言われて購入することに決めました」(同) 値段は3600万円弱ぐらいだった。気になったのは、引き渡しの際、ぐるぐる巻きにされたガス管がキッチンに放置してあったことだ。もしかして、川端が自死のためにくわえていたというホースでは……。
文豪と同じ景色を見るという“縁”
その真相はさておき、女性は部屋を冒頭のように今風にリフォーム。事件当時の面影は消えてしまったが、内装を変えやすいのがマンションの良さでもある。一方で昔と変わっていないものもある。 自死の当日、川端が逗子マリーナを訪れたのは午後の早い時間だった。その日は澄み切った晴天で、バルコニーから江の島や富士山がよく見渡せたはずだ。 「部屋を使うのは月に2、3回ですが、ここからの眺めは大好きです。川端さんが見ていたのと同じ景色だと思うと、マンションを受け継いだ“縁”を感じてしまいますね」 そう話す女性の横には、供養として購入した『川端康成全集』(新潮社刊)が。川端本人が過ごした部屋で読むのは、また違った味わいになるだろう。
デイリー新潮編集部
新潮社