泡の下はパラタイス!「透き通るような柔肌に差し色際立つ、色白スレンダー」が身をよじる【渓流釣り】
■キャッチしたのは、透き通るような柔肌に差し色際立つ色白スレンダー
釣り上がっていくと、大きな岩が累々と流れを堰き止め、その間を水が勢いよく流れていました。その流心脇の反転流は深さもあり、水中に沈む岩の陰が薄暗く口を開けています。イワナはなかなか出てこないですが「必ず大物が入っている」と確信していました。 何度も微妙に落とす場所や流し方を変えながら「この次で出なければ、(フライを)沈めてみよう」 そう思った一投、泡の縁に漂うフライを目指して悠然と浮上してくる魚影! 躊躇せずフライを咥えて水中へと潜っていきました。ロッドが激しく曲がっている感触を味わいながら、一段下に魚が落ちていかないように耐えます。手前側が水勢のある流心のうえに足場が悪く、どうにか魚を寄せてもネットが届かず苦労しましたが、どうにか無事に迎え入れることができました。 ネットの中で元気よく身をくねらせ、何度も飛び出しそうになったのは、わずかに尺に届かない色白のイワナでした。モデルのような細身のスレンダーボディは透き通るような柔肌で、頬(エラ蓋)のラメ感が印象的で色っぽさを感じてしまいます。肌を傷つけないよう、火傷させないように、それは丁重に(もちろんフライを外す時も手で握らないように)扱って写真を撮り、早々に流れに返しました。 ここまで釣り上がるにつれ、どんどん魚の反応もよくサイズもアップしていたので、さらに釣り上がりたい気持ちはあります。空を見ると徐々に雲が厚くなっているような気がしました。翌日からはまとまった雨が降る予報になっています。出発前に見た予報では日中は、(上流の稜線付近も含め)雨が降らないことになっていました。しかし、所詮は予報に過ぎません。帰り道は往路を引き返すしかなく、当然釣り上がるほどに下までは遠くなります。若い頃にはさらに突っ込んで痛い目を散々見てきました。後ろ髪を引かれつつも、楽しい思いをしているうちに渓を離れることにしました。 杉村 航(すぎむら わたる) 山岳フォトグラファー。 1974年生まれ。兵庫県育ちの長野県在住。 沢に薮山、山スキー、道なき道をいく山旅が好き。 ライフワークはトラウトフィッシング。美しいヤマメや イワナを求めて、全国の渓流に足しげく通う日々。 小谷村山案内人組合所属、北アルプス北部遭対協。 全日本釣り団体協議会公認・フィッシングインストラクター
杉村 航