「南海トラフ巨大地震」が起きたら、じつは「一番液状化の危険度が高い地域」
一番液状化の危険度が高い地域
今年元日に起きた令和6年能登半島地震では各地で液状化現象がみられた。現地調査して最も深刻な液状化被害だったのが石川県河北郡内灘町。道路や敷地には地割れや最大1mの段差が生じ、多くの家や電柱が傾いていた。内灘町は震央から約100km離れ、震度5弱の揺れだったが、建物の応急危険度判定を実施した結果、1679棟のうち25・7%にあたる432棟が建物内に立ち入らないよう求める「危険」と判定された。この地域は日本海と河北潟の間にある砂丘から緩く傾斜している住宅街で、主に砂層で地下水位も高く以前から液状化の危険度が高いとされていた地域。地盤改良などの対策をしないと、地震のたびに繰り返すのが液状化現象の特徴。 【マンガ】「南海トラフ巨大地震」が起きたら…そのとき目にする「ヤバすぎる惨状」 液状化現象とは、地震の震動で地盤が液体状になる現象である。液状化は、主に同じ成分や同じ大きさの砂層からなる地盤が、地下水で満たされバランスを保っている場合に、地震が発生すると液状化現象が起きやすいといわれている。地震の振動によって、地下水の圧力が高くなり、砂の粒子同士の結びつきが弱まって地下水に浮いたような状態になる。その際、押し出された水が砂とともに地表に溢れ出し、地盤そのものが液体のようになる現象を「液状化現象」と呼んでいる。 液状化は地盤沈下や、地盤が液状化現象によって水平方向に移動する「側方流動」や建物や構築物の損壊などを引き起こす。液状化に見舞われると、重いものが沈下し、軽いものが浮き上がる傾向にある。噴砂による車両の埋没、軟弱地盤であれば建物が均等でなく一方向に偏って沈下・傾斜する「不同沈下」、電柱の傾倒、マンホールなどの軽い構築物の浮き上がり、道路と橋との取り付け部の大きな段差、杭を打った建物と道路との段差、マンホールや暗渠などの砂詰まり、下水管など埋設物や配管の損傷など、液状化によって多様な地盤災害が生じる。とくに戸建て住宅では、建物が損壊しなくても、少しでも建物や床が傾いてしまうと、健康を害することが多いため、そこに住み続けるのが困難になる。 液状化を防ぐには、主に次のような対策がある。「(1)地盤の転圧(地盤を締め固めること)、(2)支持層まで杭を打って建物を支えること、(3)地盤改良(流動化処理工法など)、(4)地中壁で敷地を囲い、地盤の揺れや側方流動を抑制する」など、いずれにしても、自治体が公開している「液状化危険度マップ」で確認し、危険度が高い地域にお住まいであれば、早めに建築士協会、建築事務所協会、自治体の建築課など相談することをお勧めする。 国のモデル検討会によると、南海トラフ巨大地震の震源域における「基本ケース」「東側ケース」「西側ケース」「陸側ケース」「経験式」の5つの地震動ケースごとに計算した結果、どのケースでも、南海トラフ巨大地震が発生すれば、中京圏が一番液状化の可能性が高い、という結果が発表されている。とくに伊勢湾岸と名古屋市など愛知県西部および中央部が液状化の可能性「大」と判定されている。愛知県の「国の震度分布、液状化危険度、浸水想定域を前提とした市町村別試算について」の液状化危険度予測でも、名古屋市などが極めて液状化の危険性が高い地域が多いと発表されている。 名古屋市の地形は、西部から南西部の沖積平野、中央部の台地、東部の丘陵地と大きく3つに分かれる。西部~南西部の沖積平野は、主に海面の上昇・下降により海底が陸地となったといわれる地域、及び河川からの土砂が堆積した地域で、江戸末期から明治にかけて行われた干拓などにより、新田開発地域など比較的新しい地盤のため、強度が弱く、地震発生時に揺れが大きくなり、液状化の可能性が高まるといわれている。