深刻すぎる…人材不足で地方公務員が「ブラック労働」に陥る未来
小規模自治体ほど人手不足が深刻
日本総合研究所の推計は、2045年に現行水準の行政サービスを維持するには地方公務員数が約83万9000人必要だが、約65万4000人しか確保できず、充足率は78.0%まで低下するとしている。自治体規模別では大都市(政令市、中核市、特例市)が83.0%、一般市が74.5%、町村が64.6%で、小規模自治体ほど人手不足が深刻になる。 これを裏付けるようなデータがある。公益財団法人東京市町村自治調査会の「自治体における窓口業務改革に関する調査研究報告書」(2020年)が生産年齢人口の減少率を基に窓口業務にあたる住民課正規職員数の増減率を計算しているのだが、2045年には2018年と比べて、多摩市30.3%減、八王子市29.2%減、町田市24.2%減など軒並み激減となる。 市役所や町村役場などが最低限必要とする職員数を2~3割も欠いたならば、窓口対応だけでなく、政策立案能力が低下する。そうでなくとも、平成の大合併で自治体の面積が拡大したところが少なくなく、1人の職員が受け持つ担当エリアはかつてに比べて拡大傾向にある。そうした状況でマンパワーが足りなくなったのでは、迅速な対応ができない場面が増加するだろう。
ごみの収集コストが高くなる
行政サービスの劣化が進む要因は、職員数の不足だけではない。 住民数が減り、しかも年金収入を中心とする高齢住民の割合が増えることで、個人住民税や地方消費税、法人事業税、法人住民税といった地方税収(都道府県税と市町村税)が少なくなっていく。地方税収が減れば地方自治体の単独事業を廃止、縮小せざるを得なくなり、ますます行政サービスは質を保てなくなる。 人口密度が低下した地域ではごみの収集コストが高くなっている。ごみ焼却施設の老朽化や道路の補修が遅れたり、地域包括ケアシステムなどが十分に機能しなかったりといった事例も出てきている。行政サービスや生活を支える公的サービスが十分に届かないケースが今後は増えそうだ。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)