【哀悼2023】坂本龍一と谷村新司は何を日本に遺したのか…まったく異なる2人のアーティストに共通する、1980年代以降に生まれた“新しい日本のスタンダード”
「日本的でありつつエキゾチック」どこにもない独自のメロディーを構築
1983年には、大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』に俳優として出演、同時にサウンドトラックも担当し、メインテーマ『Merry Christmas, Mr. Lawrence』は、坂本の最も有名な曲となった。 この『戦メリ』で映画音楽を手掛けたことが、その後の坂本の活動に大きな影響を与える。 1987年にはベルナルド・ベルトルッチ監督に請われ、『ラストエンペラー』の映画音楽を担当。この作品で、日本人初のアカデミー作曲賞を受賞する栄誉を受け、「世界のサカモト」と呼ばれるようになる。 https://youtu.be/LGs_vGt0MY8 『Ryuichi Sakamoto - Merry Christmas, Mr. Lawrence』。Decca Recordsより 『戦メリ』やベルトルッチ作品では、坂本のオリエンタルな曲想が活かされ、日本的でありつつエキゾチックという、どこにもない独自のメロディーを構築されていた。 それまでソロ作品ではアカデミックな作風の多かった坂本が、洋画邦画を問わず、多くの映画音楽を手がけるようになったことで、その前衛性に大衆性が良質の形でブレンドされたのだ。
ブレイク前から年間300本以上のライブをしていたアリス
一方の谷村新司は、1948年大阪府出身。フォークグループのロック・キャンディーズを経て、1971年にアリスを結成。1975年の『今はもうだれも』でブレイクし、一躍人気グループとなる。 アリスはブレイク前からライブバンドとして全国津々浦々を周り、年間300本以上の公演を行った年もあるという。 また、谷村は単独で深夜ラジオ放送のパーソナリティを務め、そこでのあけすけで気さくなキャラクターが、高校生・大学生を中心に人気を集めた。 さらにはギターメーカーのCMに出演し、多くのギター少年を輩出。当時、アリスの曲でギターを覚えたという高校生は数多くいたものだ。 78年ごろから『冬の稲妻』『チャンピオン』などの大ヒットを連発し、この時期からテレビの歌番組にも頻繁に出演するようになる。学生に人気のライブバンドから、全国区の人気を獲得していったのだ。