ECB、世界の選挙と地政学のリスク警告-金融安定報告
(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)は、地政学的緊張と世界各地で相次ぐ選挙によってネガティブサプライズが引き起こされ、市場が動揺し金融の安定が脅かされるリスクが高まっていると警告した。
ECBは16日、半期に一度の金融安定報告を公表。これまでのところ市場はこのような脅威を深刻に捉えていないため、ショックが発生した場合にセンチメントが急変する危険にさらされていると指摘した。また、欧州連合(EU)や各国の選挙が公的財政の先行きに対する不確実性を高めていることにも注意を促した。
デギンドスECB副総裁は報告書で「経済・金融面でマイナスのサプライズが発生する可能性は高く、従ってユーロ圏の金融安定は依然として脆弱(ぜいじゃく)な見通しであるというリスクがある」と説明。「地政学的環境や、完璧なシナリオを想定した価格設定を踏まえると、センチメントは急速に変化する可能性がある。こうした価格設定は、期待に反したニュースに対して市場が大きく反応する余地を生み出す」と分析した。
ロシアのウクライナ侵攻、中東紛争、米大統領選挙、来月の欧州議会選挙と、不確実要素は多い。
こうした背景にもかかわらず、深刻な景気後退や失業率の急上昇を伴わずにインフレ率が2%に向かって低下することで、ユーロ圏経済がソフトランディング(軟着陸)する見込みは膨らんだ。EUの欧州委員会は15日発表した春季経済見通しで、物価上昇率の予想を従来から引き下げる一方、経済成長率の予測は据え置いた。
これは金融安定に対する全体的な脅威が6カ月前の前回報告時と比較して後退していることを意味すると、ECBは指摘。ただ、政府の政策や経済環境に関する疑問は依然として強いと付け加えた。
ECBは「インフレ率がコンセンサス予想から大きく乖離(かいり)する場合や経済成長が弱まる場合、あるいは地政学的対立がさらに激化する場合、金融市場のボラティリティーは大幅に上昇する可能性がある」と 警告。