輸入か? 密輸か? アフガニスタンの市場に並ぶ材木はどこから来たのか?
アフガニスタンの首都カブール。撮影のために小高い丘の上に上がると、意外な光景が目に入ってきた。何千もの丸太の並ぶ材木市場だ。高地で岩山が多く占めるこの国では、ほとんど森林を見かけることはないから、こんな市場があるとは少々驚きだった。 パキスタンとの国境にあるクナル州やナンガハール州は森林地帯で、家具などに使われる良質のヒマラヤ杉の産地だという。しかしここ数十年の違法伐採によって、その8割近くが破壊されてしまった。 政府は産業伐採を禁じているが、そんな法律など有名無実。中東やアジアでの需要が多く、高値で売れるから、州の役人までグルになっての木材の密輸出が止まることはない。さらに、木材密輸はタリバンやイスラム国などの過激派組織の資金源としても利用されるようにもなった。 アフガニスタンの森林が占める割合は今や2%にも満たない。とどまることのない人間の強欲によって、荒涼とした土地からさらに緑が失われ続ける。この汚行は、この国から最後の木が切り倒されるまで止まることはないのだろうか。 (2012年5月撮影・文:高橋邦典) ※この記事はフォトジャーナル<世界の市場の風景>- 高橋邦典 第53回」の一部を抜粋したものです。