納車1~2か月後の悲劇! テスラEV「サイバートラック」のボディに、突如「オレンジ色の斑点」が現れ始めたワケ
「サイバートラック」にさび発生
テスラは、先進的な電気自動車(EV)の開発・生産で世界的に注目を集めている。そんな同社が発表した意欲的な新製品「サイバートラック」は、米国だけでなく日本でも正規ディーラーが販売するEVピックアップトラックだ。 【画像】えっ…! これが60年前の「海老名SA」です(計14枚) サイバートラックはEVピックアップトラックという珍しいコンセプトだが、テスラはサイバートラックの先進性を表現するため、ボディ全体に高強度ステンレスを採用した。ボディに塗装を施さず、シルバーのメタリックな光沢を放っているのもサイバートラックの大きな特徴だ。 ステンレスは一般的にさびない金属とされており、待ち望んでいたユーザーは、永久に美しいシルバーボディを期待していたことだろう。 ところが、サイバートラックの納車直後から車体にオレンジ色の斑点が発生するという不具合がユーザーから報告されており、2023年末に納車が始まってからわずか1~2か月でこの不具合が発生したということが相次いでいる。 斑点は車体表面の金属さびが原因で、無塗装のステンレスむき出しの車体にさびが発生した結果である。テスラの先進EVが原始的なさび問題に悩まされていることを残念がる声は多いが、先進性と環境性能を両立させたサイバートラックも実用面ではやや不便なようだ。
さび発生の要因
ステンレスは一見さびない金属のように見えるが、実はある条件下でさびが発生する。ステンレスは「Stainless-Steel」(染み、汚れのない鋼材)という名前を持つ非常にさびにくい合金で、家庭の台所のシンクや食器などでおなじみの金属である。 毎日台所で水にぬれても赤さびが出ないことから、ステンレスはさびない金属と思われているが、実はステンレスは製造段階からすでにある意味で「さびている」のだ。 ステンレスの表面には、含まれるクロムの効果で不働態皮膜という薄い膜が形成され、あらかじめ表面全体が一種のさびで覆われているような形ため、他のさびが発生しにくくなっているのだ。 ステンレスの表面が傷ついても、傷ついた部分にすぐに不動態化皮膜が形成されるため、乱暴に扱っても水に対する耐久性を失わない。 ただし、酸性の液体や薬品と反応すると赤さびや茶色のさびが発生することがあり、ステンレスはさびないわけではない。また、金属間の電位差によって発生する“電食”と呼ばれる、他の金属と接触することで発生するさびもあり、表面に異なる金属が接触していてもさびが発生することがある。 テスラのサイバートラックは通常、駐車中や走行中に炎天下や雨天、過酷な条件にさらされることが多く、道路に巻き上げられた金属くず、他の車両のブレーキダスト、オイルや排ガスに含まれる酸性成分など、ステンレスをさびさせる要因は多い。 また、テスラは取扱説明書のなかで、サイバートラックのステンレス製ボディの取り扱い方法について、腐食性物質が接触した場合は直ちに洗浄するよう指示している。しかし、ボディにさまざまな物質が付着することは日常茶飯事であり、日頃からボディを洗浄しておかなければ、さびの発生を完全に抑えることはできない。 サイバートラックを日本で手に入れることは可能だが、その魅力のひとつであるステンレスボディの維持には相当な苦労を強いられることになるだろう。