「命の音」日常動かす力に 妻子失った男性悲しみ抱え
金沢市の会社員角田貴仁さん(47)は帰省先の石川県珠洲市で、倒壊した実家の梁の下敷きになった妻と小3の長男を亡くした。家族の時間は止まったまま。ただ、息を引き取る直前に最後の力を振り絞って居場所を知らせた長男の「命の音」に背中を押され、復職した。癒えぬ悲しみを抱えながらも日常を動かし始めた。 元日、角田さんは妻裕美さん(43)と長男啓徳君(9)の3人で、実家に帰省。自宅に戻ろうと荷造りをしていた午後4時過ぎ、激しい揺れで家屋が倒壊した。両親は無事だったが、居間にいたはずの2人の姿が見えない。外に出て、がれきの隙間から名前を叫ぶと「ドン、ドン」と大きな物音が聞こえた。 「生きている」。無我夢中で音の方向に行くと、2人の頭の上に梁が落ちていた。啓徳君がこたつの板を必死にたたいていたのだと気付いた。 葬儀に先立つ納棺師との打ち合わせで、倒壊の際にできた啓徳君の顔のあざをどうするか聞かれた。亡くなる直前、必死に居場所を知らせてくれた。「あえて隠す必要はない。頑張った証しだ」と思い、そのままにしてもらった。