センバツ高校野球 33年ぶり 学法石川の軌跡/下 二人三脚 躍進の力 /福島
◇1年生バッテリー&主将とGM 約70人の野球部員(男子)を擁する学法石川で、躍進の原動力となったコンビが二つある。一つは、捕手で4番を打ち、投手も務めた大栄(おおさかえ)利哉と、左腕の投手・佐藤翼の1年生バッテリー。フレッシュな2人を周囲の2年生がバックアップすることで、念願の春の甲子園への切符につながった。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 大栄は秋季東北地区大会の全4試合で安打を放ち、捕手としても二塁への送球タイムは1・8秒とプロ並み。その強肩でマウンドでは140キロ台半ばの直球を投げ込み、準々決勝の金足農(秋田)戦では1失点で完投した。佐々木順一朗監督(64)は「投手としての経験は少ない分、怖いものなしのピッチングを見せた」と目を細める。 兄の陽斗(あきと)さん(22)=中央大4年=は仙台育英(宮城)で甲子園に2回出場して投打で活躍した。大栄本人も“二刀流”で注目されるが、「兄も甲子園では本塁打を打っていないので、自分が打つ」と話し、まずはバットでの活躍を期す。 強打の名門、八戸学院光星(青森)との準決勝で、1失点の好投を見せた佐藤翼。公式戦初先発だったが、「緊張はしないタイプ。強い相手を驚かせてやろうと楽しんで投げられた」と言ってのける。佐々木監督は「度胸があって投げっぷりも良い。投手としての完成度は高い」と評価する。 カーブやチェンジアップ、スライダーを投げるが、一番の自慢は直球。130キロ台と目を見張るような球速ではないが、スピンの効いた球の質には自信がある。「打席で見ると思ったよりも速いとよく言われる。甲子園でも強豪の打者陣をびっくりさせたい」と意気込んでいる。 もう一つのコンビは、「縁の下の力持ち」としてチームを支える主将の小宅(おやけ)善叶(よしと)(2年)と、グラウンドマネジャー(GM)の伊藤壱太朗(2年)。 投手の小宅は東北地区大会では登板機会がなかったが、ベンチから仲間に声をかけることでチームを鼓舞し続けた。「うちは善叶のチーム」と選手たちから全幅の信頼を寄せられるキャプテンの最大の持ち味は「苦しい時でも笑顔を絶やさないでいられること」。佐藤翼も「自分たちが伸び伸びやれるのは小宅さんたち先輩方のおかげ」と感謝する。 そのキャプテンシーは筋金入りで、併設校の石川義塾中時代も主将を務め、さらに当時から「学法石川に進んでも主将になって、そして甲子園へ行く」と公言していたほど。センバツ出場が決まった翌朝の練習では早速、ハッスルプレーでチームを引っ張っていた。 佐々木監督が前任の仙台育英時代から導入していたのがGM制度。監督の意図を選手たちに正確に伝え、練習メニューも管理する重要な役割だ。新チーム発足時、2年生の中での話し合いで伊藤が選ばれた。プレーヤーとの両立は難しくなるが、「チームのためになるのなら」と決断。「善叶と二人三脚で、甲子園でも通用するチームを作る」と意気込んでいる。 ◇ この連載は、竹田直人、岩間理紀が担当しました。