原作ファンも納得の実写化! 今からでも遅くない「キングダム」入門
原作者も脚本に参加
監督は「GANTZ」「図書館戦争」各シリーズなど、エンタメ大作のヒットメーカー、佐藤信介。アクション監督は佐藤監督と多くの作品で組む名コンビの下村勇二が務め、ダイナミックなド迫力アクションをみせる。 そして、脚本には黒岩勉と共に、原作者の原自身も参加。大筋は原作に忠実だが、随所に実写版ならではのアレンジやオリジナルの展開も交え、今回の第3作では「馬陽の戦い」のエピソードの中に、嬴政の壮絶な過去が明かされる「紫夏編」を、原作とは異なる形でうまく組み込んでいる。原作では、嬴政が心を許した一人の宮女にのみ明かした過去が、映画では王騎に戦いへの覚悟を問われた中で明かされる形に変わり、戦場を離れていた王騎が総大将を受諾する動機の一つとなる。さらには、その場にいた信も嬴政の覚悟を知ることになり、3人の関係性を深めると共に、原作にもある先々代の王・昭王の遺言を伝える流れに繋げている。 人質として敵国で酷い扱いを受け、深い闇の中にいた嬴政を救い出してくれた恩人・紫夏が登場する過去のエピソードは、「殺させない!」と必死の形相で嬴政を守り抜く紫夏役の杏の熱演も相まって、感動必至。また、“嬴政がなぜ中華統一を目指して戦うのか”という、シリーズの根幹のテーマにも迫るだけに、7年前の嬴政(設定上は9歳)を子役ではなく吉沢本人が演じたことも効果的だ。
続篇はさらに面白い!?
前半は嬴政の物語で感情を揺さぶり、中盤以降は本シリーズならではの戦略・戦術を交えた大スペクタクルの激闘が、隊長となった信のアクション満載で描かれ、熱く心を躍らせる。さらには「馬陽の戦い」自体が、王騎にとって因縁深いことも次第にわかってくる。信、嬴政、王騎が並び立ち、前半と後半に大きな盛り上がりを見せた上で、衝撃的な最高のクリフハンガーをみせて終わる今作は、全篇戦闘シーンだった前作よりもドラマ性が増し、感動と興奮のサービス満点なエンタメ大作となっている。 2024年1月10日リリースの『キングダム 運命の炎 ブルーレイ&DVDセット プレミアム・エディション』には、特典が満載。映像特典ブルーレイディスクには、メイキング、舞台挨拶イベント映像集、主要キャストやスタッフによる3種類のインタビューなどが、総計3時間以上の大ボリュームで収録。山﨑と吉沢と松橋真三プロデューサーによるインタビューでは、本作に込めた熱い思いと共に、松橋プロデューサーから「紫夏編」は削られる可能性もあったという衝撃秘話などが明かされている。また、吉沢は「3(作目)が一番(面白い)かと思ったら、噂では次(4作目)が一番面白いらしい」と、続篇への期待を煽るコメントも聞かせてくれる。さらには豊富な封入特典もつく。 第4作も決定している本シリーズは、山﨑と吉沢がキャラクターと自身の成長がリンクしているとも語っていて、さらなる続篇にも意欲をみせている。膨大な原作すべてを映画化するのは難しいだろうが、これだけスケールの大きな映画シリーズを同キャストでどこまで続けることができるのかは、見届けてみたい。数十年にわたって続く、かつてない連続活劇大作シリーズとなるかもしれず、シリーズ未見の方は今のうちに見始めることを、ぜひ、お勧めしたい。 文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社 (「キネマ旬報」2024年1月号より転載)
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