「株主価値最大化」シンガポール型経営の日本ペイントと「禅」の精神の関西ペイント、どちらに軍配が上がるのか
「精神性」と「合理主義」
精神性に重きを置く「日本型経営」と実用性・実利にシフトした「(西洋流)合理主義」。どちらも重要である。 【写真】インドネシア、首都移転という大胆な試みは成功するのか? 問題は、この両者のバランスを取って、どのように活用するのかということではないだろうか。 企業(事業)の方向性(大局)の基盤となる「精神性」と、日々の業務を効率的に行うための「実利・実用性=合理主義」はどちらも必要不可欠だ。 「精神性」が極端に行き過ぎると、いわゆる「竹槍でB29を落とす」というような非現実的な行為を社員に強要する、ブラック企業に成り下がる。 逆に経済性・合理性ばかりを追求すると「拝金主義」となり、社員のモラルも低下する。 その両者の「バランス」と企業経営を考えるうえで、1881年に創業した極めて日本的企業でありながら、現在ではシンガポールのウットラムグループが過半の株式を保有する日本ペイントは非常に興味深い。
創業の理念
まず先に、日本ペイントのライバル企業である関西ペイントの話から始めたい。 創業の精神は、関西ペイントHP「創業者の想い・関西ペイントの経営を支える創業者の精神」の「創業者・岩井勝次郎と長岡禅塾」に詳しい。 1918年に岩井勝次郎が関西ペイントを立ち上げたが、彼は座禅を通じ、さまざまな雑念の中から己れの経営理念を貫徹していく努力を重ねた。そこで禅を通じて人間形成をしようと考え、1933年巨額の私財を投じて京都郊外の地に“長岡禅塾”を開設したのである。精神性を重んじる「日本型経営」の真髄と言えるかもしれない。 そして、関西ペイントに先立つこと37年、1881年に創業した日本ペイントにもその精神性は存在する。 詳細は、同社HP「時代を超えて受け継がれる想い」に詳しい。 創業前の1878年、茂木重次郎が、「日本で無毒な白粉を製造できないか」という相談を受けた。当時、白粉には鉛が使用されていたため、鉛中毒に苦しむ人々が多かったのだ。ゼロからの開発で連日の失敗を繰り返したが、1879年、遂に日本初の国産亜鉛華の製造に成功している。 このような「創業の理念」は、ウットラムグループの一員となった現在も「日本ペイントグループの経営理念」のように受け継がれている。