東欧ジョージア議会選、不正選挙と野党が批判 首相は反論
東欧ジョージアで26日、議会(定数150)選挙の投開票があった。イラクリ・コバヒゼ首相は、選挙結果を「圧勝」と歓迎するとともに、不正選挙や暴力行為の疑惑を否定した。 ジョージア選挙管理委員会が発表した公式の暫定結果では、与党「ジョージアの夢」は89議席を獲得。野党は61議席だったという。「ジョージアの夢」は過半数を得たものの、同党が望むような憲法改正や、野党の活動禁止などを実施するには不足している。 野党4派は今回の選挙結果を認めず、不正選挙だと非難。与党が票を盗んだと主張している。野党4派のうち、「変革のための連合」と「統一国民運動」の2派は議会をボイコットすると表明している。 親欧米派のサロメ・ズラビシヴィリ大統領は、野党指導者に囲まれて記者会見し、投票が「完全に改ざん」されたと非難。今回の投票は認められないと述べ、ロシアが選挙に介入したと主張した。大統領はさらに野党支持者らに、28日に議会議事堂の外に集まるよう呼びかけた。 ■不正選挙の批判と首相の反論 選管発表によると、コバヒゼ首相が率いる与党「ジョージアの夢」が得票率で54%を獲得した。しかし、野党系テレビ局が西側の世論調査会社を使って実施した2種類の出口調査は、野党の勝利を予想。「ジョージアの夢」の得票率は54%ではなく、42%になると見通しを示していた。 国際選挙監視団は、多数の投票違反が選挙結果に影響を与えた可能性があると指摘し、第三者による調査を呼びかけた。アメリカと欧州連合(EU)もこれを支持している。しかしコバヒゼ首相は、3111カ所の投票所のうち、不測の事態があったのは「ほんの数カ所の選挙区」だったと主張している。 欧州議会のシャルル・ミシェル議長(EU大統領)は27日夜の声明で、「不正の疑いは真摯(しんし)に解明し、対応しなくてはならない」と述べ、迅速かつ透明性のある独立調査を求めた。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、「法の支配」を尊重するようジョージア政府に呼びかけた。 一連の批判についてコバヒセ首相はBBCのインタビューで、「不規則な事態は、あらゆる場所で、どの国でも起きる」と述べた。 首相はさらに、野党はうそをついていると批判。2016年、2020年、2021年の選挙の際にも野党は不正選挙だと主張したのだと首相は言い、「もちろん野党にはほかにやりようがない。なので自分たちがうそをついたと支持者に認めるか、政府が不正選挙を仕組んだのだと言うしかないのだ」と述べた。 ■新しい電子集計システム 26日の選挙では初めて、票の電子集計システムが使われた。コバヒセ首相は、電子集計導入のおかげで「投票結果を改ざんする余地はまったくない」と主張した。 新システムを監督したジョージア選管の委員長は、投票はおおむね平和かつ自由に行われたと評価した。しかし、監視グループが初期調査の結果を発表したところ、まったく異なる状況が明らかになった。 ジョージアの選挙監視組織「公正な選挙と民主主義のための国際社会」(ISFED)は、贈収賄や威圧、投票用紙の水増しなど、数々の違反行為を報告し、今回の選挙結果は「ジョージアの有権者の意向を本当に反映しているとは言えない」と述べた。 アメリカのNGO「全米民主国際研究所(NDI)」代表団の一員で、元EU大使のペル・エクランド氏は、特に投票前の期間が民主的な基準を満たしていないことは明らかだと話した。 「有権者に対する威圧は、選挙期間中ずっと、投票日当日に至るまで続き、選挙手続きを著しく損なった」 ■ロシアとの関係は 野党は政府を親ロシア派で「親プーチン派」だと非難している。これについてコバヒゼ首相はBBCのインタビューで、そのような事実はないと否定。野党がそのような主張で、政府の評判を落とそうとしているのだと述べた。 首相はさらに、2008年の5日間の戦争以来、ロシアがジョージア領土の20%を占領していることを指摘し、ジョージアの周辺ではジョージアが唯一、ロシアと国交のない国なのだと述べた。 他方、「ジョージアの夢」を結党した大富豪ビジナ・イヴァニシヴィリ氏は数カ月前から、西側に敵対的な言説を展開。不特定の「地球戦争政党」がジョージアをウクライナでの戦争に引きずりこもうとしているなど、主張してきた。裏付けのない同氏の数々の主張から、「ジョージアの夢」がロシア式の法律を採用するほか、ロシアの勢力圏に戻るとしているのではないかとの懸念が高まっている。 ロシアのコメンテーターたちも、「ジョージアの夢」の勝利を、ジョージアが再びロシアに軸足を移し始めた兆候として広く歓迎している。 さらに「ジョージアの夢」は近年、権威主義的な傾向を増し、外国から資金援助を受けるメディアやNGO、そして性的少数者(LGBTQ)コミュニティーを標的にした、ロシア風の法律を可決している。EUはこれを「民主主義の後退」と非難し、ジョージアの加盟交渉を凍結している。 こうしたなか、EU加盟国ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、今回の選挙結果が出る前から、「ジョージアの夢」の4期目当選を祝福した。オルバン氏は28日にも、ジョージアを訪問する予定。 「ジョージアの夢」は、EU加盟交渉の再開に向けた協議を早急に開始したいとしているが、オルバン首相が選挙の2日後に首都トビリシに到着するという事態は、EUの不興を買う可能性がある。 (英語記事 Georgia PM rejects vote-rigging claims as president calls mass rally)
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