<解説>“ネタバレ公開”と上映回の難しいバランス
公開後はネタバレ自粛ムードが漂うことも多い昨今、今回本作で公開日に重要な情報解禁が行われた理由としては、「わんぷり」(もとい「プリキュア」シリーズ)が、キッズファミリー層をメインターゲットとした作品であることも大きいように思います。つまり、あまり出し惜しみをして機を逃すと、ネタバレが解禁されて大人たちが「これは見なきゃ!」と思う頃には、鑑賞できる上映回がなくなってしまう可能性が高いのです。
実際に、公開から約1カ月が経過した現在の本作の上映時間をみていただければよく分かりますが、大ヒットに加えまだまだ上映館も多いとはいえ、既に上映時間は朝か遅くて夕方ぐらいとなっています。ハイターゲット向けのアニメ作品であれば、まだまだ会社勤めの大人たちも行きやすい午後7時以降の上映回もあるタイミングでしょう。しかしそれらの作品と違い、あくまでメインターゲットがキッズ・ファミリー層の作品は、公開後1カ月ほどで、土日はまだしも、平日は完全に“会社終わりに見に行ける時間帯”での上映はなくなってしまうのです。
そうであれば出し惜しみせず、大人たちも見に行ける上映回があるうちに、情報を出してしまうのもひとつの手なのかもしれません。そうすることで実際に、鑑賞を迷っていたけれど、初日の情報解禁で背中を押され、行きやすい上映回があるうちに映画館に行けた自分のような大人もいるのではないでしょうか。
とはいえ、映画館で知って新鮮な気持ちで驚きたかったと、残念に思う人も当然少なくはないはずですので、そこはバランスの難しいところ。今回の初日情報解禁も、恐らくその点には苦慮しつつ、それでもキッズ・ファミリー向けという本作ならではの特性を考えて、より多くの人に作品を届けたいと選ばれた対応だったのかもしれません。
ネタバレでがっかりする人と、ネタバレのおかげで興味を持って見に行きたくなる人。どちらも大切なファンであることは間違いありません。ネタバレ解禁や情報解禁は遅ければいい、早ければいいというものではなく、作品やその主な観客層、上映規模といった様々な要素によって、その作品に最適なタイミングがあるものなのだと思います。