<ラグビー>1勝で全日程を終えたサンウルブズの収穫と課題
国際リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦したサンウルブズが、初年度の戦いを終えた。 現地時間7月15日夜、南アフリカはダーバンのキングスパークスタジアム。上位8強によるプレーオフ進出を目指すシャークスと、打ち合いを演じた。結果は、29―40と惜敗した。 立ち上がりはセットプレーからの手数の少ない攻めで連続失点も、センターのパエア・ミフィポセチの大きな突破、スクラムハーフの茂野海人による鋭い速攻などで前半を19―21と競った。 後半も相手のエラーでしばし自軍ボールを確保したが、最後尾のフルバックの位置からリアン・フィルヨーンが徹底マークされるなど、上手く陣地が確保できなくなった。28-22のスコアで迎えた30、36分に連続失点し、ほぼ力尽きたか。 ジャパンこと日本代表とのリンクも期待されるクラブは、これで最終成績を1勝13敗1分けとした。過去の初参戦クラブのなかでも最低の成績に終わったが、この日のゲーム主将を務めたスタンドオフの田村優は言った。 「もっと勝ちたかったし、良くするところはあります。ただ、皆がポジティブに小さなことを積み上げてきた。これからの日本のラグビーのためになるいい積み上げはできた」 ジャパンは前年までの4年間、エディー・ジョーンズヘッドコーチ体制下にあった。おもに宮崎県内でおこなわれる長期合宿を通し、理不尽を超える力とチームの結束を醸成。2015年秋のワールドカップイングランド大会では、南アフリカ代表などから歴史的な3勝を挙げた。そして、2019年の日本大会に向けたボトムアップの手法が、2014年に参戦が決まったスーパーラグビーでの経験だった。 サンウルブズには、日本のトップリーグとスーパーラグビーの両方でプレー経験のあるトゥシ・ピシがいた。終盤戦は故障離脱も、スタンドオフの位置で鋭い突破力を披露。そんなピシも、かねて「日本のトップリーグの決勝よりワンランク上の試合が毎週おこなわれるのが、スーパーラグビーです」と語っていた。このステージでのプレーが個々の基準値を高め、ワールドカップのテストマッチ(国際間の真剣勝負)など高質なゲームへの免疫をつけられるのだ、と。 練習で鍛えるのではなく、本番で鍛える。それがいまの日本代表の基本理念なのだ。事実、力自慢のチームが並ぶ南アフリカカンファレンス1で、サンウルブズの各選手は確かな手応えを掴んだ。 5試合でゲーム主将を務めたセンターの立川理道は、7月2日に一昨季王者のワラターズとぶつかった際(東京・秩父宮ラグビー場/12―57と敗戦)に実感したか知らずのうちに、自身がタフになった、と。 仲間と2人がかりでタックルしながら、相手のボールをもぎ取る。そんなシーンを、2度も演出したのだ。 もともと、敵の球を奪うジャッカルというプレーを好んでいた。スーパーラグビーの舞台でそれと同種の技術を発動した格好だ。後にこう、振り返るのである。 「タックルは(力勝負ではなく)スキル(が重要)だと思っているんですけど、そのスキルの向上が高いレベルのなかでできていると思います」 タフさの象徴は、立川のいないシャークス戦でも示された。 序盤の攻撃機会では、しばしタックラーに掴み上げられる格好で押し戻された。南アフリカのチームが得意とする、チョークタックルという力業を食らったのだ。それでも時間を重ねるごとに、そのチョークタックルに屈せず球を保持するようになる。ランナーが腰を落とし、後方の援護と対になって進んだ。 常に密集戦の間近に立つ茂野は、ここに至るまでの背景をこう表現した。 「一概に言えないですが、どこのチームもコンタクトが強い。(サンウルブズは)姿勢を低くして当たる、アーリー(素早い)サポートを…(が必須となる)。その意味ではいい経験ができている」 6月、サンウルブズ勢を軸にした日本代表が活動。欧州6強の一角であるスコットランド代表を愛知と東京に迎えた。いずれも敗れたものも、短時間の準備期間ながらクロスゲームを演じられた。その背景にも、かような個々の成長があった。