石丸伸二氏、都知事選躍進の裏にユーチューブ 310万回超再生も メディアとの関係変化
7日投開票された東京都知事選では、無所属新人の前広島県安芸高田市長、石丸伸二氏(41)が約166万票を獲得し、2位に滑り込んだ。躍進の背景にあるのが、動画投稿サイト「ユーチューブ」の活用だ。選挙期間中、石丸氏の街頭演説や振る舞いを切り抜いて投稿する人も多く、再生回数が310万回を超えたものもある。新聞やテレビなどの大手メディアは告示後、有力視された候補をほぼ均等な分量で報じたが、ユーチューブには石丸氏の演説を無制限に視聴できる環境がある。専門家は、「今回がメディアと選挙の関係を変える節目になった」とも指摘する。 【画像】石丸氏はライブ配信を活用した(ユーチューブ「石丸伸二のまるチャンネル」から) ■「切り取り屋」が相乗効果 「NHKをはじめ、マスメディアが当初、まったく扱わなかった。そういうところだ」 石丸氏は7日夜、記者団から最初に敗因を問われた際、笑みを浮かべながらこう反論した。東京都新宿区のホールに居合わせた選挙ボランティアらからは爆笑と拍手が起こり、この模様も、ユーチューバーがNHKの中継動画を切り抜いて投稿。この動画は、8日午後の段階で10万回以上再生されている。 石丸氏を巡っては、市長時代から市議会で市議と丁々発止でやりあう場面などが、ユーザーの関心を集めそうな場面を切り取って投稿する「切り取り屋」らによって投稿され、多くの再生回数を稼いだ経緯がある。 今回の都知事選では、石丸氏の陣営がユーチューブにある公式チャンネルで、街頭演説を細かく投稿した。それだけでなく、「切り取り屋」も選挙戦を通じて多くの投稿を行った。あるショート動画は8日午後現在で310万回以上も再生されている。 ネット上の検索の傾向を測る「グーグルトレンド」によると、ユーチューブでの検索ボリュームは、6月20日の告示以降、石丸氏が小池百合子氏(71)と蓮舫氏(56)を5~7倍程度離す状態が続いた。投票日の7月7日には、石丸氏と蓮舫氏との差は7・5倍に拡大していた。 ユーチューブには、動画の再生回数に応じて広告収入が入る仕組みがある。「切り取り屋」には石丸氏の純粋なファンもいれば、多くの再生回数を見込み、高い広告収入を求めて参入するケースもあるとみられる。これらが相乗し、石丸氏に絡む動画が多く視聴された形だ。 ユーチューブで視聴が増えた別の要因として、ユーザーが共有した情報などを元に重要と推測される情報を示す、独自の「アルゴリズム」(計算手法)がある。石丸氏の動画を何度も検索したり、長い時間視聴したりした場合は、アルゴリズムによって石丸氏の関連動画がユーチューブの自身の画面に並ぶケースが多い。興味のない情報が遮断され、特定の情報ばかりが表示される「フィルターバブル」と呼ばれる現象に結びついた可能性もある。