「武川さ~ん!」と駆け寄り涙した日 最後まで全力で生き抜いた山本量子さんをファンは忘れない
10月11日、大阪・MBSで「山本量子お別れ会」が行われた。今年8月、48歳の若さで亡くなったタレント山本量子さんをしのぶ会だった。 【写真】闘病生活から一時仕事復帰した当時の山本量子さん 同会は関係者向け、一般ファン向けの2部構成。関係者向けでは、西川ヘレン、かの子、メッセンジャー(黒田、あいはら)、原田伸郎、森たけし、ヤマヒロ(山本浩之)ら、仕事でつながりのあった方々が多数参加していた。 場内には、量子さんの映像や写真、歌手として使っていた楽譜など、故人の思いがいっぱい詰まったもの飾られていた。 多くの出席者のなかで、たまたま武川智美アナウンサーの姿を見かけた。MBSを代表するベテランだが、記者はこれまで面と向かって武川さんと話をしたことがない。失礼を承知しながら「少し、お話よろしいでしょうか」と声をかけた。 武川さんといえば、入社33年目。MBSラジオきっての売れっ子アナウンサーにして、リスナーからも広く愛される存在。嫌な顔をされることも覚悟したが、そんな不安を消し飛ばすように温和な笑顔で対応してくれた。「会社の広報を通してくれないと、何も話せません」と拒否されても仕方ない状況だったが、その態度はりりしかった。 聞けば、量子さんは武川さんを姉のように頼っていたという。「いくつもの番組で、てきぱきとアシスタントを務められる武川さんは私のあこがれです」と打ち明けられたこともあったという。 その言葉どおり、武川さんはコンちゃん(近藤光史)やメッセンジャーら、スキを見せればボコボコになるまで容赦なく攻撃してくる猛獣たちを相手に番組をしっかりコントロールし、同時に自分のキャラクターもしっかり発揮している。そのスキル、そのメンタルの強さに量子さんは感服していたのだろう。 病魔と闘って10年。今年になって入退院を繰り返し、量子さんは徐々にやつれていった。そんなある日、MBS内で量子さんは偶然、武川アナの姿を見つけた。 「武川さ~ん!」と駆け寄るや、目には涙があふれ、言葉にならなかった。「苦しい。必死で頑張ってきたけど、もういっぱい、いっぱいです」。そんな思いだったのではないか。 「こちらからも何を言えばいいのか、言葉になりませんでした」と、武川さんはその日のことをはっきり記憶している。 2人の対面は、その時が最後になった。お別れ会で、武川さんは量子さんの映像や絵を感慨深げに見つめていた。 ある意味、時は残酷なもので、量子さんが出演していた番組は後任のアシスタントが務め、日々は淡々と過ぎていく。亡くなって、やがて2カ月。人の記憶は時の経過とともに薄れていくものだが、多くのリスナーは山量ちゃんのことを忘れまい。「お別れ会」に参加しようと行列を作った熱心なファンの背中が、そう語っていた。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)