静岡県産二番茶、先行き不透明 一番茶安値受け正念場 指導機関/需給バランス配慮を 現場/例年並みの生産態勢
静岡県内の茶産地で二番茶の生産準備が進んでいる。一番茶の記録的安値を受け、JAなど指導機関は需給バランスに配慮した生産を呼びかけ、相場維持を図る。ただ、例年並みの生産態勢を敷く工場も多く、現場と思惑のずれが生じている。買い手の仕入れ姿勢も含め、相場動向に不透明さが残る中、日本一の茶どころはブランド維持に向けて正念場を迎えている。 富士市で5月28日、地元生産者とJA職員らによる会合が開かれた。二番茶の生産販売見通しを協議する席上、JA職員が前年の二番茶の見本を示し、口を開いた。「問屋から、この出来栄えなら今年も仕入れると聞いています。ただ、茶葉の成分値が条件に満たないと買わないという話です」 富士地区は中西部に比べ摘採時期が遅いため、取引単価が先行産地の相場展開に左右される。今期の一番茶取引でも単価が前年を下回り、販売に苦しんだ。富士地区荒茶共販委員会の村松拓哉委員長(41)は「二番茶は例年並みに生産するつもりだが、相場次第では途中でやめる農家も出てくるはず」と見通す。 二番茶は価格こそ一番茶の約3割にとどまるが、収量は一番茶の8割程度が確保できることから「刈り捨てるくらいなら出荷する」と生産に臨む農家が多い。 一方、指導機関はこうした現状に危機感を強めている。JA静岡経済連などは、生産者に対して「二番茶の受注生産の徹底」を通達。低迷した一茶取引を踏まえ「無計画な生産は、茶商の過剰在庫につながり、今後の取引に大きく影響する」と警鐘を鳴らす。同経済連茶業部の清水直也部長は「茶商にも内容が伝わることを見越して生産側の姿勢を明確にし、取引に緊張感を与える狙いもあった」と通達の意図を明かす。 だが現状でこの呼びかけに応じる生産者は限定的だ。先月29日の静岡茶市場売手懇話会では、各産地のJA担当者の大半が「ほぼ例年並み」とする生産見通しを示した。一番茶取引では底値割れした荷を二番茶の代替として仕入れた茶商も散見された。ある問屋は「在庫もあり、計画が立てづらい。お互いに悩みどころの多い取引になりそう」と話す。 県産二番茶の生産は、5日ごろから中西部の早場所で本格化し、7月上旬ごろまで各地で続く見通し。 <メモ>二番茶は、一番茶の摘採後45日程度を経て新たに伸びた芽を刈り取り、荒茶に加工して出荷・取引される。一番茶に比べカテキンなどの成分が多く、主にドリンク飲料の原料となる。JA静岡経済連の推計などによると、2023年の県産一番茶の荒茶1キロ当たり平均単価1955円に対し、二番茶は660円。県産二番茶の荒茶生産量は7550トンで、一番茶の約8割だった。
静岡新聞社