レストラン業界に革命を起こしたゴーストキッチン、急速に衰退中(海外)
増加するストレスや顧客からの苦情によって、レストランはゴーストキッチンを縮小している。 「ウェンディーズ」や「クローガー」がゴーストキッチンを閉鎖することをニューヨーク・タイムズが報じた。 ゴーストキッチンはパンデミック時代の革新的存在だった。だが、匿名性によって基準が低くなっている。 ゴーストキッチンは、外食産業にイノベーションをもたらしたことで注目されたが、今はその匿名性に悩まされている。 ゴーストキッチンは店舗も座席もないレストランで、配達のみを行う。新型コロナウイルスのパンデミック中に生まれたアイデアだ。レストランやいわゆるバーチャルブランドは、これに多額の投資を行った。 だが、パンデミックが落ち着き、顔を合わせないテクノロジーに依存したことで、クオリティ面での不平が沸き上がり、需要は落ちてきている。客はそれぞれのブランドとつながることはなかったのだ。ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、現在、多くのレストランやバーチャルブランドは、そのストレスが見返りに見合わないと話している。 オンライン上でミスタービースト(Mr. Beast)として知られ、2020年12月にミスタービースト・バーガー(MrBeast Burger)を作ったYouTuberのジミー・ノナルドソン(Jimmy Donaldson)のように、ゴーストキッチンを使って自分自身のフードを作るインフルエンサーやセレブもいる。 ネットフリックスのドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の俳優、ノア・シュナップ(Noah Schnapp)も、2023年3月にテンダーフィックス(TenderFix)という名前のチキンテンダー・チェーンをオープンし、約1000あるIHOPのキッチンで料理を作っていた。現在もテンダーフィックスが運営しているかは不明だ。同店のSNSはおよそ1年アップデートされておらず、ウェブサイトはアクセスできない状態だ。 ウェンディーズ(Wendy's)やクローガー(Kroger)のような大手ブランドも、キッチンが注文に対応するのに苦労し、客からは多くの苦情を受けるゴーストキッチンの運営を縮小しているとNYTは報じている。 チリズ(Chili's)や他の多くのチェーンを展開するブリンカー・インターナショナル(Brinker International)は、パンデミック中に、チリズの店舗で料理を準備するイッツ・ジャスト・ウィングス(It's Just Wings)とマッジャーノ・イタリアン・クラシックス(Maggiano's Italian Classics)という2つのバーチャルレストランをオープンした。だがNYTによると、多くの客が店内での食事に戻り、同社は2023年、2つを両立させるのは難しいことに気づいた。そのため、ブリンカーはマッジャーノを閉鎖し、2023年にイッツ・ジャスト・ウィングスの規模を縮小した。 「労働力と設備があるならバーチャルブランドの運営は簡単だと誰もが思ったが、バーチャルブランドの配達時間のほとんどは、レストランの繁忙時間にぶつかるのが現実だ」とブリンカーのケビン・ホックマン(Kevin Hochman)CEOはNYTに語った。 「バーチャルブランドの注文が来る中での、忙しいディナーの時間帯の準備は大変だった」 また、クオリティと配達時間の遅延の問題があるため、ゴーストキッチンには法的な問題に直面し始めているところもある。ミスタービーストことドナルドソンは2023年8月、受け取った肉が生だったという客からの苦情を受けたと主張し、ゴーストキッチンのパートナーであるバーチャル・ダイニング・コンセプト(Virtual Dining Concepts)を裁判で訴えた。バーチャル・ダイニング・コンセプトは今もまだミスター・ビースト・バーガーの運営を行っている。
Kenneth Niemeyer