一瞬のスピードなら松木玖生より安斎颯馬の方が上かもしれない…なんだかんだと言われてきたが、青森山田、恐るべし
【大塚浩雄のC級蹴球講座】 ◇26日 J1第20節 FC東京1―0札幌(味スタ) 一瞬のスピード。0―0で迎えた後半39分、右サイドからの原川のロングクロスを、相手DFの背後から飛び出したFW安斎颯馬(21)の右足がダイレクトでとらえる。豪快なボレーシュートは、ゴールの天井に突き刺さった。16日の磐田戦で決めたプロ初ゴールに続く一発。磐田戦は同点のヘディングシュートだったが、今度は勝ち点3をつかみ取る決勝ゴールだ。 「シュートに関してはミートすることだけを意識した。原川選手がキックモーションに入った瞬間に相手の一番危険なところに入ろうと思った。相手がマークに付いているのは分かったし、先に入っちゃえば対処できない。うまく(相手の)背中に入り込むことができたんで、ポジショニングでも良かったかなと思う」と安斎。21歳とは思えない冷静な駆け引きで、千金の一発を決めた。 FC東京のジュニアユースから青森山田高に進み、3年のとき全国高校選手権で準優勝。このとき、5ゴールを決め、大会得点王に輝いた。その後、早大に進学。ただ、昨年のうちに特別指定選手としてFC東京の試合に出場し、1年前倒しで今季からプロ契約を結んだ。 前半戦からクラモフスキー監督は安斎を使い続けた。結果は出なかったが、ここにきて2ゴール。「ハードワークすることだったり、見えないところでチームのために戦うといったことは変わらないと思う。そこがなくなったら自分の存在価値はないと思う。それをベースに、チームを勝たせるプレーが増えてきたらいい」と安斎。 青森山田高の1年後輩には松木玖生がいる。松木は3年のとき、全国高校選手権で4ゴールを決め、優勝している。いまではFC東京でゲームキャプテンを務める大黒柱だ。ただ、一瞬のスピードなら、松木よりも安斎の方が上かもしれない。 ドリブル突破のスピード、相手DFの裏に抜け出すスピード、そしてゴール前のスピード。サッカー選手にとって、スピードは天性のものであり、何ものにも代えがたい武器となる。昨季から松木が台頭し、今季はここにきて安斎が頭角を現してきた。 大きな可能性を秘めたスピードスターのゴールで、首位・町田に勝ち点差7まで迫った。荒木、松木の五輪組に加え、安斎も開花すれば、優勝を狙えるかもしれない。それにしても…。快進撃を続ける町田の黒田監督も青森山田高の監督だった。その教え子が松木、安斎。なんだかんだと言われてきたが、青森山田、恐るべし。 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)。
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