広島・森下暢仁を育てた名将のもとで急成長 佐伯鶴城の150キロ右腕が28年ぶりの甲子園目指す【高校野球大分大会】
第106回全国高校野球選手権大分大会が6日、大分市の別大興産スタジアムで開幕する。好投手がそろう今年の大分でひときわ注目を集めているのが、最速150キロ右腕の佐伯鶴城・狩生(かりゅう)聖真(3年)だ。プロ12球団も注目する九州屈指の右腕が28年ぶりの甲子園を目指してこの夏躍動する。 ■高校野球の最新情報はコチラ ◇ ◇ ◇ スラリと細身の体から150キロの速球を投げ込む。昨秋は146キロだったが、春の地区大会で大台を記録。「自信にもなったし達成感を感じました」と成長の手応えを感じた瞬間だった。 中学時代は主に遊撃手だった狩生は高校で投手に専念し順調に成長してきた。その素質を見いだしたのは大分商で森下暢仁(広島)を育てた渡邉正雄監督。中学時代に遊撃を守っていた姿を見て「立ち姿や動きが森下に似ていたんです」とプロで活躍する教え子に重ねた。 森下ももともとは内野手。大分商2年の夏の大会は三塁で出場していたが、最終学年になって本格的に投手に専念しプロ注目の右腕へと成長した。狩生も入学後に渡邉監督から高校時代の森下の話を聞き、森下が目標になった。動画を見てフォームを研究し、今の投球フォームは森下を参考にしている。渡邉監督の育て方も「森下式」。「投手の練習よりもまず内野の練習をさせました。投球練習はさせずにずっと遊撃でノックを受けていた時期もあります」と渡邉監督。内野でスナップスローを繰り返すことで手首の使い方を覚え、伸びのある球が投げられるようになるというのが渡邉監督の考え。入学時は120キロだった球速は1年生で120キロ台後半、2年生で140キロを突破し順調に成長してきた。「予想以上に成長のスピードが速かった。春に150キロが出るとは思わなかった」とその急成長ぶりは渡邉監督の予想を超えていた。 昨夏はエースとして投げていた狩生だが昨秋に悔しさを味わった。昨秋の大分大会ではエースナンバーを2番手の井上功大(3年)に奪われ10番になった。「負けられないと思った」。その悔しさから冬の練習では1日におにぎり6個を食べて体重増加を図り下半身トレーニングに励み、スピードアップを目指した。春にはエースナンバーを取り返したが、井上をライバルとして意識している。 井上をはじめ同学年の仲間は小学生のとき少年野球をしていたときの幼なじみばかり。別の高校進学を考えていた仲間に誘われ佐伯鶴城へ入学した。「みんなで甲子園に行きたい」と最後の夏の思いを話す。140キロを超える好投手がそろう今年の大分大会でトップを目指す。「大分で1番という気持ちで投げます。別大興産ではまだ150キロを出した高校生はいないそうなので、自分が最初に出したい」と目標を挙げた。(前田泰子) ◆狩生聖真(かりゅう・しょうま)2006年12月25日生まれ。大分県佐伯市出身。明治小2年のときに「佐伯スラッガーズ」で野球を始める。昭和中では軟式野球部に所属。遊撃と投手を兼任し、3年春は遊撃手で九州大会に出場した。佐伯鶴城では1年夏からベンチ入りし1年秋から背番号1をつけたが、2年秋だけ背番号10だった。父も佐伯鶴城野球部出身。185センチ、72キロ。右投げ右打ち。
西日本新聞社