大事な「常識的」金銭感覚 記者ノートfrom湊町
常識的な金銭感覚は本当に大事だな-。「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=に対する殺人罪などに問われた元妻、須藤早貴被告(28)の裁判員裁判が和歌山地裁(福島恵子裁判長)で続いている。 一代で財を成し、数々の女性と浮名を流した野崎さんの遺産は約13億円といわれる。裁判で検察側は「莫大な遺産を得るため、致死量の覚醒剤を摂取させて殺害した」と指摘。被告は「社長を殺していません」と無罪を主張している。 一方、被告は家族に遺産目当ての結婚だったとは認めている。事件の3カ月前の平成30年2月、野崎さんが月100万円を被告に払う条件で結婚した。被告は当時22歳、実に55歳差婚。現実感のない話だが、それゆえに話題性があって世間の耳目を引くのだろう。 裁判で飛び交う金額も一般人のそれとは桁違いだ。被告は野崎さんの死後、財産などから約6800万円を取得。逮捕までに約5500万円を費消した。まさに規格外の金銭感覚だ。被告は当時20代前半だが、実は野崎さんと知り合う以前から数千万円規模のカネに触れる機会があった。 被告は9月、札幌市のキャバクラ勤務時代の客から現金約2980万円をだまし取った詐欺の罪で懲役3年6月の判決を受け、確定した。身の丈に合わない金銭感覚。少なくともこの詐欺事件に関しては、金銭面の欲望が自身の首を絞めたように思えてならない。(倉持亮)