“書店ゼロ”増加「競合店もなくなった…」福岡の老舗書店の生き残り策 インフルエンサーが手掛ける新感覚の古書店もオープン
インフルエンサーが目を付けたワケ
書店にも個性と特徴が必要な時代になっている。 2024年4月、福岡市博多区に1軒の書店がオープンした。天井高く積み上げられた本の山に、レトロなラジカセがディスプレーとして置かれている。昭和の雑貨店に来たかのような雰囲気の中、出迎えてくれたのは「ふるほん住吉」の店主・山田孝之さんだ。 「テーマパークあるある。待ち時間が長すぎてもう話すことがない」など、ユーモアを交えた浮世絵風のイラストで“あるある”ネタを発信する山田さん。インスタグラムのフォロワーが100万人を超える人気イラストレーターだ。 時代の最先端で活躍するインフルエンサーが、なぜ今の時代に書店を開いたのか。 山田さんは、AI(人工知能)の進化によってイラストの仕事が誰でも簡単にできるような状態になってきていることに危機感を感じ、今のAIには難しいと考える“実際の空間を作る”ということに目を付けたという。 「本屋さんという空間に行って空間を楽しむとか表紙を楽しむとか、そういう需要はあるので、今後もそういう感じの流れは来ると思う」と話す山田さん。“AIにはできないこと”としてたどり着いたのが書店だ。
書店に求められる“新たなカタチ”
“いるだけでワクワクする”そんな書店を目指し、山田さんはまずディスプレーに力を入れている。 店内には、なかなか手に入りにくい絶版の書籍のほか、昭和20年代に発刊された雑誌など1万5000冊以上が並べられている。 小倉城の横にジェットコースターがあった時代のものなど、古い絵はがきも置いている。 山田さんは、「『懐かしい』って見られる方もいらっしゃいますし、僕のようにこの世代を知らない世代は発見があったりですね、いろんな楽しみ方があります」と話した。 ふるほん住吉の来店客数は、平日は100人、休日は300人ほどで、1人の店の滞在時間が長く、1時間くらいいることもあるという。 「仕事が終わったらここに来るようにしている。良いのがあったら買おうかなって」と話す来店客や、「ディスプレーとかかわいくて、駄菓子屋さんに来たみたい。昔、子どもの頃に読んだ本とかあってすごく懐かしい、うれしかったです。また読んでみようかな」と話す来店客など、固定客も付きつつあるようだ。 “町の本屋さん”が次々に消える中、求められる新たなカタチとは何なのか。 山田さんは「ネットとかAIでは見つけられたなかったり、楽しめなかったりするようなものを提供できる場所になればと思って。情報をただ得るだけじゃなくて、こういう空間を楽しんだり、今風にいうとエモい感覚みたいなものを味わえるような場所とかですね、そういったものが求められているのかなと思います」と語った。 (テレビ西日本)
テレビ西日本