ACLのキーマン「運営担当」横浜FM決勝進出の“陰の立役者”は宿舎下見でシャワーの水圧も確認?
◆ACL決勝第2戦 横浜FM―アルアイン(日本時間26日午前1時、UAE・アルアイン) 横浜FMはACL決勝第2戦に向けてUAE入りし、当地で調整を進めている。第1戦(2〇1)で勝利を収めたため、第2戦では引き分け以上で優勝となる。 * * * 「普段のJリーグでは『安心・安全に試合を成立させること』が運営担当の仕事。特別な感情を入れないようにしている。でも、ACLのアウェー戦は、本当に気持ちが入るんですよ。だから…。めちゃめちゃ勝ってほしいんです(笑い)」 肩書きは「マーケティング&コミュニケーション部 Jリーグ運営担当」。飯尾直人さんの業務内容は多岐に渡り、とても忙しい。特に、ACLが絡むと―。 * * * 試合間隔が空くと、トップチームに関わるクラブスタッフは「束の間の休日」が得られるチャンスとなる。しかし、ACL出場クラブの運営担当にとっては「視察のチャンス」到来だ。 飯尾さんが今回のACLで視察に飛んだ国は5か国7都市。原則、1泊2日の強行軍。時間がなく、仁川(韓国)とイロイロ(フィリピン)はハシゴした。主務の山崎慎さんとともにアジア各国を飛び回った。 機内から荷物を運び出す動線の確認。空港のどこにトラック、選手バスを手配するべきか。空港内での動きを必死にシミュレーションする。 宿舎選びも重要な任務。時間の許す限り、ホテルを下見する。貸し切りにできる部屋数は。ホペイロ(用具担当)の部屋、マッサージルームは確保できるか。日本食が手配できるスーパーは近くにあるか。プールやジムの設備は。「山東のホテルは水圧が弱くて…」(飯尾さん)と、今大会初のアウェー戦の地・山東で得た学びはその後に生かし、シャワーの水圧確認は「TO DO」リストに入った。 スタジアムでもロッカーの個数や形状をチェックし、チームと共有する。テクニカルスタッフが映像を撮る場所も確認。相手チームとミーティングも行い、異国に駆けつけるマリノスサポーターのために観戦ルールを抑える。国によっては、日本領事館へあいさつに出向くこともあるという。 * * * 実際の遠征時は、約60人の選手団を先導する。120~150個の荷物の積み込みから始まり、常にチームの先頭に立って行動する。現地到着後も、試合で着るユニホームの色、公式会見の時間など、様々な調整を行う。 試合日、主な事業スタッフは試合の7時間前にスタジアム入りする。しかし、飯尾さんはその間「まあ、力仕事ですね(笑い)」と帰国準備に取りかかる。宿舎の荷物を運び出し、2時間前にチームと一緒にスタジアムに入る。空き時間には、次のJリーグ主催試合に向けたオンライン会議にも出席するというから大変だ。 * * * クラブに「決勝進出の『陰の立役者』を取材したい」と直球をぶつけた結果、「適任がいます。うちの運営に飯尾って男がいまして…」と返答があって今回のインタビューが実現した。 そんな陰の立役者に「仕事、楽しいですか?」と聞いた。「楽しもうと思ってやっています!」と苦笑いのような、照れ笑いのような、でも仕事に対する誇りを確かに感じる笑みが返ってきた。「僕は選手じゃないですけど、応援してくれるファン・サポーターの方々に嬉しさを与えられることもある。それがやりがいです」 選手も、監督も、スタッフも、思いは1つ。喜田拓也も、ハリー・キューウェルも、飯尾直人も、思いは一つ。勝つ。つまり優勝する。つまりアジアの頂点に立つ。クラブ一丸となり、悲願の初タイトルをつかむ。(岡島 智哉)
報知新聞社