トラック運転手の残業規制スタート 中国地方でも「Gメン」巡回 荷主の理解も鍵
トラック運転手の残業時間の上限規制が1日、始まった。中国地方では、運送業者と荷主の取引を監視する国の「トラックGメン」が大手宅配業者などの事業所を巡回。残業時間が減って給料が目減りしないよう、賃金を引き上げた地場企業もあった。運転手不足で物流が停滞する「2024年問題」の懸念もある中、「規制に対応できない」と訴える中小事業者も少なくない。 【写真】ヤマト運輸の酒見広島主管支店長㊧に残業規制について説明する中国運輸局の田中課長(広島市安佐南区) この日は中国運輸局のGメンたち職員4人がヤマト運輸、佐川急便、日本通運、福山通運の広島市内の事業所を回った。Gメンの田中幸久貨物課長は、安佐南区のヤマト運輸広島主管支店で酒見高志主管支店長に「労働時間の管理徹底をお願いします」と呼びかけた。 時間外労働の上限を年960時間とする規制や、1日の拘束時間を原則13時間以内とし、最長でも15時間にするといったルールも伝えた。酒見主管支店長は「ルールを守り、持続可能な物流を実現させたい」と応じた。 地場企業も対応を進めた。ロジコム・アイ(東区)は1日、約400人の運転手を含む全グループ社員の賃金を年率で5%上げた。残業時間が減っても給料が目減りしないよう配慮した。1日に大型トラックの高速道路での最高速度が時速80キロから90キロに引き上げられたのに先立ち、3月下旬には安全運転を最優先にするよう改めて運転手に伝えた。 残業規制を守るには荷主の理解も必要になる。クボックス(西区)は1日から、一般道で片道120キロを超える全ての日帰り便について、荷主の料金負担で高速道路が利用できるようになった。久保満社長は「一般道では残業規制に引っかかることを荷主に理解してもらえた。今日からトラック事業を安売りする時代が変わる」と喜んだ。 荷主側も対応を強化している。ジャム製造のアヲハタ(広島県竹原市)は多くの原料をまとめて発注したり、容器の軽量化で積載率を高めたりする取り組みを加速させる。 一方、広島県内の中小の運送事業者は「既に人手不足が深刻で、残業規制には対応できない」と明かす。長時間の荷役が常態化し、運賃の引き上げ交渉も進んでいないとして荷主への働きかけを国に求めている。 働き方改革関連法に基づく時間外労働(残業)の上限規制は1日、自動車運転業、建設業、医師、鹿児島・沖縄両県の製糖業の4業種に導入された。
中国新聞社