「自衛隊は国民を守るものではない」「“災害救助隊”にすべき」 憲法9条への“自衛隊”明記の是非 リベラル派重鎮と議論
これに和田氏は「国際環境がやはり変わってきている」とした上で、「自衛隊ができた時に憲法改正をすべきだったと思っている。国防のための部隊が現に存在していたとして、それが違憲だとなると、相手国の侵略を受けた時に戦えるのかという論が必ず出るわけだ。政治家は最悪の状況に備えなくてはならないし、どんな状況になっても国土と国民を守らなくてはならない」との見解。 佐高氏は「外交によって戦争を防ぐのが政治家の役割だ。“攻められたらどうするか”は軍人の思考で、それは政治家の仕事の放棄だ」と投げかけた。
■河崎環氏「“あなたの子どもの喉元に武器が突きつけられても護憲と言えるのか?”に返す言葉がない」
佐高氏は、2019年にアフガニスタンで銃撃され死亡した中村哲医師こそが“歩く日本国憲法”だとの見方を示す。 「“攻められたらどうする”とそればかり言うが、中村哲さんは生活・暮らしを立て直して戦争を防いだ。戦争に行った人も元の所に帰ってきて、砂漠を緑地に変えるのを手伝ったわけだ。中村さんは上空を砲弾が飛び交っている中で水路を掘った。まさに今も同じような状況の中で、それが意味するのは単なる理想ではない。中村さんはアフガニスタンで切手になっているし、肖像画もある。私は一万円札の顔にしろと言っているが、そういうふうに世界に押し出していくことが必要だ」
一方、コラムニストの河崎環氏は「私は長い間護憲側にいたが、7年前、北朝鮮のミサイル発射が激しくなった頃の討論で、改憲に強い意識を持っている論客に『あなたの子どもの喉元に武器が突きつけられた状態で護憲と言えるのか』と問われ、返す言葉がなかった。戦後80年近くが経ち、日本の周りもきな臭くなり始めたからこそ、どこかを見直すという動きが政治的に現れていると感じる」と投げかける。 これに佐高氏は「中村さんは『死んでも撃ち返すな』と言っていた。そして、国とは何なのか?ということ。(小説家の)城山三郎さんは17歳で海軍に志願するが、自分の理想としている軍隊、天皇の軍隊とは違うことをつくづく悟らされて、その後国が信じられなくなる。国と自分が直接結びつくと考えられているが、そうではないと。安倍晋三さんが“我が軍”と言ったのは、皮肉の意味で正しい。つまり権力者のための軍隊だ」とした。
和田氏は「日本は民主主義国家で、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣。つまり、時の内閣がおかしいということであれば、内閣を交代して統制を取ることもできる」と指摘。「佐高さんの話は理想論だと思うが、否定するものではない。ただ、日本のように平和を希求するばかりではない国々が周りにあり、過去にも侵略や覇権主義的なことをやってきている中で、それが通るかどうか。“平和が重要だ”“武装ではなく限定的な警察力でそれぞれやっていきましょう”という思想が世界に拡大していくには、1000年という歴史がかかるのではないか」と述べた。(『ABEMA Prime』より)