フランス・マクロン大統領の決断は第3次世界大戦を招くか、6月30日に総選挙・ロシア派兵の意思は
何事も二番煎じは評判が悪い。小ナポレオンも大ナポレオンのように普仏戦争(1870~1871年)、3回にわたるイタリア独立戦争(1848~49、1859、1866年)、アメリカ・メキシコ戦争(1846~1848年)、クリミア戦争(1853~1856年)と戦争に明け暮れたことは確かである。ただ、これらの戦争を偉大なるフランス革命の成果であると評価するものはいない。 ミニ・ナポレオンともいえるマクロン大統領も、大ナポレオンよろしく自由と民主主義のためにウクライナ戦争へ参戦しようという計画をもっているようだ。大ナポレオンが行ったように、本当にロシア戦線へ参加するのか。
しかし、国民の多くはこれを認めてはいない。ことごとく議会と対立している現状では、その実現の可能性はない。しかも、残り在任期間は3年である。 任期後は私人に戻るしかない。民主主義社会では大統領は終身ではないし、皇帝になることもできない。確かに八方塞がりなのだ。まさか3度目の正直、すなわちクーデターを計画しているわけでもあるまい。 ■マクロンの決断で世界が揺れる 反極右戦線を糾合しようにも、今のところ左派の結集すらも難しいかもしれない。また旧来の左派(社会党)と右派(共和主義者)もマクロンを見放すかもしれない。そうなると、解散前により大幅に議席を減らすこともありうるだろう。
しかし、マクロンは登場したときから策士であると言われ続けてきた。マジシャンともいわれていた。彼にはどんな秘策が隠されているかはわからないところが、いよいよもってナポレオンに酷似しているのだ。 ドゴールの道を歩むのか、レオン・ブルムとなるのか。マクロンはたんなる小さなアリにすぎないのか、それともライオンなのか。選挙の結果が気になるところである。 もちろん、この選挙はマクロンの権力維持の問題にとどまらない。下手をすると好戦的な人物であることで、第3次世界大戦のきっかけをつくった人物としてその名を永久に残すことになるかもしれない。
これはたんなるフランスの議会選挙だが、世界はその結果に注目しなければならないだろう。
的場 昭弘 :神奈川大学 名誉教授