厄介者ジャンボタニシ鶏の餌に ひなの成長、好み問題なし 愛媛県
愛媛県養鶏研究所は、水稲を食害するスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)を、採卵鶏の飼料に活用できることを実証した。加熱・乾燥処理をしたジャンボタニシを粉砕した飼料で、たんぱく質やカルシウムの代替が期待できる。ひな鶏の成長に影響はなかった上、採卵鶏の嗜好(しこう)性も既存飼料と遜色なかった。研究所は今後、卵の食味試験などに取り組み、生産現場への導入の可能性を探る。 愛媛県におけるジャンボタニシの被害は、標高の高い山間部を除く全域で発生している。水稲農家は、薬剤散布や冬場の耕うんで対策しているものの、水路や土壌中で越冬するため、防除に限界があるのが実態という。 同研究所は未利用資源の一つとして、ジャンボタニシの飼料への活用に目を付けた。飼料高騰も背景に、2022年から採卵鶏に給餌する試験に乗り出した。 県農林水産研究所の試験用の水田で捕獲したジャンボタニシを、冷凍保存した上で飼料化。温風乾燥機で100度に2時間さらし、1時間自然乾燥させる工程を2回繰り返して、寄生虫を完全に死滅させてから機械で5ミリ以下に粉砕した。 飼料としての有効性を確認するため、①生後8~13日のひな鶏に給餌して、生育に支障がないかを調べる安全性試験②採卵鶏に給餌する嗜好性試験――を実施。①の試験では、配合飼料に2・5%、5%、10%の割合で混ぜた三つの試験区と配合飼料だけ与える対照区を設け、同じ日にふ化したひな鶏に6日間与えた。増体を比較したところ、試験区と対照区ともに体重が増え、健康状態も良好だった。 ②の試験では、配合飼料に1%、2・5%、5%、10%の割合で混ぜた四つの試験区を設け、それぞれ配合飼料だけの対照区と並べて配置。1日目と2日目では配置を入れ替え、鶏が餌を選択する方法で2日間の摂取量を比較した。白色卵鶏と褐色卵鶏で好みの傾向に違いがあったものの、対照区とほぼ同等の食い込みを確認できた。 産卵率や卵の殻の硬さなども、短期間の調査では問題が見られなかったという。同研究所は「卵の食味や飼料化のコストなど調査すべき点はまだ多いが、ジャンボタニシは鶏の餌として有望」と手応えを見せる。
日本農業新聞