中田翔に"キャンプの華"を譲るな!ドラゴンズ生え抜き野手たちへの檄(げき)
高木守道さんの進言
持病のアキレス腱痛から、2年ぶりの復活をめざす1980年(昭和55年)シーズン、谷沢さんは、2軍キャンプからのスタートを覚悟していたという。32歳の時だった。しかし、当時の中利夫監督に対し「谷沢は1軍キャンプに置かなくてはだめだ」と主張したベテラン選手がいた。のちに2代目「ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれる高木守道さん(※「高」は「はしごだか」)である。 調整で2軍に置いたら、そのままその空気に染まってしまうという心配を、チームリーダーの高木さんが感じて、監督に提言したのだ。それによって、谷沢選手は1軍キャンプに参加して、シーズンに臨み、その年すぐに、自身2度目となる首位打者のタイトルに輝く、見事な復活劇を見せたのだった。
ベテランこそ1軍キャンプ
谷沢さんは、高木さんの進言にあらためて感謝しながら、シーズンに1軍で活躍するべき選手は、キャンプの時点から、その空気感の中にいなくてはいけないのだと語った。大島選手の名前も挙げて「特にベテランこそ」と念押しした。大島選手や高橋選手は、自らの調整と共に、「若手に背中を見せる」という"竜の先輩"としての大切な役割をも担っているのである。今やそういう立場なのである。 一方の投手陣では、手術からの復活をめざす35歳のエース大野雄大投手が、自ら志願して1軍キャンプに合流して、ブルペンで熱投を見せている。「ドラゴンズを背負ってきたのはオレたちだ」と大島選手や高橋選手にも、早い時点での1軍合流、そして、中田選手に負けない"竜のオーラ"を放ってほしいと願う。
石川昂の合流が待ち遠しい
もうひとり、ベテランではないが、石川昂弥選手を忘れてはいけない。2年前に手術した左膝の状態も慎重に対応しながら、立浪和義監督の指示で"無期限の2軍調整"が続いている。しかし、谷沢さんの弁を借りるならば「1軍キャンプにいるべき」であろう。 無理は絶対に禁物だが、あの打撃練習での見事な放物線は、1軍の舞台で披露してこそのものである。2024年シーズン、石川選手が逆襲へのキーマンのひとりであることは間違いないのだから。 立浪監督の口からは「競争」という言葉が、これまで以上に飛び出している。既存のメンバーに新しいメンバー、ベテラン選手に若手選手、チーム全員が同じグラウンドで競争してこそ、戦う集団が完成する。まずは竜の野手陣よ、"翔タイム"に話題を独占させるな。その意地こそが、長年の低迷を一気にぶち破るパワーの源となるはずである。 【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】 ※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が"ファン目線"で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。
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