「タトゥーがある人は信用できない?」岩田剛典の『アンチヒーロー』“首タトゥー”が大きな注目を集めた理由
タトゥーに託された演出上の意図
緋山は第1話・第2話で取り上げられた町工場社長殺人事件の容疑者。弁護を買って出た明墨は無罪を勝ち取るのだが、実は緋山は本当に殺人を犯していて、明墨にはそれを分かっていながら、ある目的があって緋山を無罪にした……ということが後に明かされる。劇中、緋山は恵まれない環境で育つ中で非行に走り、闇バイトに手を染めてしまった過去があることも明かされており、そういう背景をタトゥーに匂わせた……という制作サイドの“こだわり”を宮崎監督は伝えたかったのだろう。 緋山が信頼できる人物なのか、本当に無実なのか、と疑問を抱かせる要素は、俳優の演技によってまず表現するもの。実際、第1話の緋山は法廷での態度がいいとは言えず、「本当はやっているのでは?」という声はその時点からネット上で散見されていた。タトゥーだけでなく、岩田の演技やドラマの演出によって十分に「視聴者の皆様を惑わせる」狙いは達成されていたのだ。 また、最終話放送後に「私の中でタトゥーの謎まだ解決してないんだけど」「結局緋山の耳の裏のタトゥーは明かされないまま?」と、制作側の解説を知らないであろう視聴者のコメントもあり、緋山のタトゥーへの注目の高さが伺える結果に。 実際、岩田が第6話放送のタイミングで、タトゥーがはっきり映る写真を自身のインスタグラムに“匂わせ”投稿していたため、何か大きな意味があると考えていた視聴者も少なくなく、“あのタトゥーは事件の裏にある闇の組織を表しているとか?”などさまざまな考察も出ていただけに、“過去のやんちゃぶりを匂わせるため”という答え合わせに「何か深い意味があるのかと思ったのに」と感想も見受けられた。
EXILEや三代目のメンバーもタトゥーはしているが…
日本では確かにタトゥーはあまり良いイメージを持たれない傾向にある。2020年末にプロボクサーの井岡一翔選手のタトゥーが試合中にあらわになったことが問題視され、JBC(一般財団法人日本ボクシング)のルール違反となったことは議論の的に。2023年放送の『有吉弘行の脱法TV』(フジテレビ系)では、地上波テレビにおけるタトゥー放映の厳しさを取り上げていた。 だが、一方で、東京2020オリンピック開催を前に日本政府が公衆浴場や温泉旅館等に対し「入れ墨をしていることのみをもって、入浴を拒否することは適切ではない」と通知。今年3月には立ち技格闘技のK-1が、これまで禁止していた日本人選手のタトゥー露出を解禁することを発表したことも話題になったばかりだ。 そもそも緋山を演じた岩田が所属するLDH JAPANには、EXILE ATSUSHI、EXILE TAKAHIRO、登坂広臣(三代目J SOUL BROTHERS)、数原龍友(GENERATIONS)など、タトゥーを入れているアーティストは少なからずおり、ファンの多くにはすでに受け入れられているはずだ。 タトゥーに対する日本人の認識のズレが改めて浮き彫りとなった『アンチヒーロー』での細やかな演出。SNSで視聴者による考察が盛り上がる一方で、制作陣も積極的に作品に関する情報を発信する現代のドラマならでの現象といえそうだ。 <文/宇原 翼> 【宇原 翼】 雑誌、ウェブメディアの編集を経て、現在はエンタメ系ライター。主にテレビドラマや音楽・アイドルについて執筆している。ドラマは毎クール15本以上を視聴。紅白出場の某歌手とは元マイミク。
女子SPA!