「全ての中国人が怖いとは子供たちに思ってほしくないが…」中国で日本人学校が全校登校を取りやめ “特に注意要する日”12月13日は例年にない緊張感
「子供の命を守るには仕方のない判断」
中国の日本人学校に子供を通わせている母親は、今回の対応について「子供の命を守るには仕方のない判断」と語る。 ――12月13日に全ての日本人学校が休校やオンライン対応になることについてどのように感じましたか? 蘇州市や深セン市で日本人学校の関係者が立て続けに襲われる事件があり、学校は生徒の命を第一に考えてご判断されたと思うので、そのことについては感謝しています。やはり敏感と言われている日になるので、子供の命を守るには仕方のない判断だと思います。 ――今回の対応が来年以降も続く可能性について不安などはありますか? これが中国で毎年何回も続いていくということであれば、やはり子供の学ぶ機会が減ることに対する心配はあります。 ――お子様の反応はどのようなものでしょうか? 子供はなぜその日が休校なのかというのを深く理解していないので、特に怖いとかの感情はないとは思います。ただ、親としてはどこまでどのように伝えれば良いのかということの難しさを感じています。一連の事件も一部の中国人が起こした事件で子供たちには全ての中国人が怖いという風には思ってほしくないので、どう話をするべきなのかということを考えています。
「日本に対する感情の悪化が全面的に広がっている」
12月2日、日本の民間団体「言論NPO」が中国と共同で実施した世論調査の結果が発表された。(調査は日本で1000人、中国で1500人の18才以上を対象に実施) 中国で「今後日中関係が悪くなる」と予測する人は去年の倍近くの75%に急増し、また日本に対して「良くない印象」と答えた中国人は去年より24.8%増えて、87.7%となった。 主催者は「対日批判が過激化しやすいSNSで日本に関する情報を得ている人が増えたことが背景にある」とみているが、言論NPO代表の工藤泰志氏は「中国国民の中にこれまで経験したことがない日本に対する感情の悪化が全面的に広がっている」と述べている。
「中国と日本は一衣帯水の隣国」
一方、今年の「南京事件」の追悼式では中国側から日本に向けて、融和的なメッセージも感じ取ることができた。 中国ではこういった式典に誰が出席するかというのは重要なメッセージになる。今年は過去に出席した習近平国家主席が出ることはなく、最高指導部のチャイナセブンと呼ばれる政治局常務委員でもなかったが、習近平氏と関係が近いとされる李書磊共産党中央宣伝部長が出席した。 李氏は、共産党のメディア・世論統制部門のトップである。李氏は、式典での演説で南京事件について「人類の文明の歴史に暗い1ページを残した」と述べ、日中間でしばしば議論となる犠牲者数を念頭に「このおぞましい反人類の犯罪には既に歴史的な結論と法律的な結論があり、証拠は山のようにある。改ざんは許されない」と強調した。 一方で李氏は「中国と日本は一衣帯水の隣国であり、両国が平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展の道を歩むことは両国民の根本的利益に合致する。中国と日本は、互いに協力パートナーであり、互いに脅威とならないという重要な共通認識を守り、戦略的互恵関係を全面的に推進し、新時代の要求に合致する建設的で安定した中日関係を積極的に構築すべきである。」と日本側に協力を呼び掛けた。 これは石破首相と習近平国家主席が南米ペルーで行った首脳会談で「戦略的互恵関係の推進」を改めて確認したことを踏まえた発言とみられる。 「中国側も努力をしてくれた」(日中外交筋の関係者)という声もあるように、多くの日中関係者の尽力によって「特に注意を要する日」とされた12月13日はトラブルもなく過ぎ去っていった。 しかし、日本人学校の関係者によると、来年の「敏感な日」において、日本人学校に通う子供たちの通学が正常通り行われるかどうかはまだ決まっていないという。 (取材・執筆:FNN北京支局 河村忠徳)
河村忠徳