大阪交響楽団注目の2公演。『Teatro Trinitario2025-新春を寿ぐ- メリー・ウィドウの世界で巻き起こるオペラガラコンサート』と第277回定期演奏会 ヴェルディ 歌劇『運命の力』
2025年新春の大阪交響楽団の2つのステージが話題を集めている。1月5日(日)にフェニーチェ堺大ホールで開催される『Teatro Trinitario2025-新春を寿ぐ-メリー・ウィドウの世界で巻き起こるオペラガラコンサート』と2月9日(日)、ザ・シンフォニーホールで行われる第277回定期演奏会、ヴェルディの歌劇『運命の力』(演奏会形式)だ。9月に行われた共同制作発表会の模様を振り返りながら、2つの公演の魅力を紹介したい。 全ての写真はこちら 制作発表会の前半は『Teatro Trinitario2025-新春を寿ぐ-』。これは堺市に拠点を置く芸術団体、大阪交響楽団と堺シティオペラ、フェニーチェ堺が行うテアトロ・トリニタリオ(三位一体の劇場)シリーズの第4弾。それぞれが単独では難しい規模の大きな公演を3者の協働によって行おうというもので、2021年12月の第2回公演、プッチーニの歌劇『トゥーランドット』は令和3年大阪文化祭賞を受賞するなど高い評価を受けている。制作発表会には、まず堺シティオペラ エグゼクティブ・プロデューサーの坂口茉里氏が登壇。今回のステージはオペレッタ『メリー・ウィドウ』の物語を追いつつ、他のさまざまなオペラ、オペレッタからのアリアを散りばめたものとなることなどが語られた。ガラコンサート形式となったのは「まだオペラ、オペレッタを聴いたことがないという方のためにも、より幅広くこのジャンルの魅力を伝えたい」という狙いから。さらに本公演の構成、演出を担当する森川太郎(Taro Morikawa)について「ウィーン育ちの気鋭の演出家で歌手(バス)としても、また大道芸の分野でも一流という多才な方。本番では森川さんのナレーションと、ジャグリングの妙技も披露していただきます」と紹介した。 共同制作発表会は記者だけでなく、堺市からの一般参加者もまじえて行われた。こうした中、登壇したのが『Teatro Trinitario2025-新春を寿ぐ-』の指揮を務める常任指揮者の山下一史。テアトロ・トリニタリオ初登場の意欲を滲ませながら、大阪交響楽団が地元・堺市で行う大型公演の重要さをアピールした。オペラ界を代表する歌手たちが、新年の幕開けと同時に堺に集まることについては「日本が誇る豪華な顔ぶれ。そんな皆さんにお得意のレパートリーを披露してもらう歌合戦のような楽しいステージになると思います。新年をお祝いするわくわくするような気持ちでフェニーチェ堺に足を運んでほしい」と語り、期待感を盛り上げた。 後半はヴェルディの歌劇『運命の力』。発表は大阪交響楽団ミュージックパートナーの柴田真郁を中心に行われた。柴田の就任以来、大阪交響楽団と柴田はこれまでドヴォルザークの『ルサルカ』、ラヴェルの『子どもと呪文』を演奏会形式で取り上げてきた。3回目にして挑むのがイタリアオペラの真骨頂とも言うべきこの作品だ。柴田は「終幕で登場人物のほとんどが死に絶えるという暗い、しかし非常にドラマティックなオペラです。この作品の演奏に当たっていつも思うのが、ヴェルディが徹底してイタリア語の語感で音楽を創り上げているということ。ですから今回私は、そうしたヴェルディの表現を可能にできるキャストにこだわりました。私の希望が120%反映された『運命の力』になると思います」と意気込みを語った。また「その暗い救いのないオペラを今、取り上げる意図は」と記者から問われた柴田は、「このオペラの背景にはイタリアの独立戦争の時代を生きた愛国者ヴェルディの民族と伝統への思いがある。現代の日本に生きている私たちが見失いがちなそうした思いを、作品を通して描いてみたい」と力を込めた。 このほかにも両公演の合唱指揮者中村貴志、『Teatro Trinitario2025-新春を寿ぐ-』に出演するバリトンの桝貴志、そして堺市出身で両公演に出演するソプラノの水野智絵が登壇。桝と水野が『メリー・ウィドウ』から『唇は黙しても』の二重唱を披露する一幕もあり、華やかな雰囲気のうちに共同制作発表会は終了した。新しい音楽文化の胎動を感じさせる政令指定都市、堺。大阪交響楽団がそんな地元・堺と世界を結んで贈る2025年の始まりの公演に、ぜひ注目してほしい。 取材・文:逢坂聖也(音楽ライター) <公演情報> 『Teatro Trinitario 2025 新春を寿ぐ “メリー・ウィドウの世界で巻き起こるオペラ・ガラ・コンサート”』 2025年1月5日(日) 堺市民芸術文化ホール(フェニーチェ堺) 大ホール 第277回定期演奏会 ヴェルディ 歌劇『運命の力』 2025年2月9日(日) ザ・シンフォニーホール