チョコプラ長田が熱弁!「攻殻機動隊」草薙素子と「ロード・オブ・ザ・リング」最新作のヒロインの共通点とは?
J.R.Rトールキンの小説「指輪物語」を原作とする大ヒットシリーズ「ロード・オブ・ザ・リング」三部作。その知られざる200年前の物語を描いた長編アニメーション映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』が、12月27日(金)より公開となる。監督は「攻殻機動隊S.A.C.」や「東のエデン」「精霊の守り人」などで知られる神山健治が務め、Sola ENTERTAINMENTがアニメーション制作を担当。製作総指揮には、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作を手掛けたピーター・ジャクソンが名を連ねている。公開を前に、“大の「攻殻機動隊」好き”としても知られるお笑いコンビ・チョコレートプラネット(以下、チョコプラ)の長田庄平に、その魅力を熱く語ってもらった。 【写真を見る】チョコプラ長田のこのポーズ、実は『ローハンの戦い』に登場するあるキャラクターへのオマージュ 舞台は、シリーズ2作目『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(02)に登場した騎士の国、ローハン。アラゴルンたちがセオデン王らと共に死闘を繰り広げた地、ヘルム峡谷の由来となった、"槌手王(ついしゅおう)"ヘルム(声:市村正親)の治世を描く。平穏な日々の最中、突然西境の領主フレカ(声:斧アツシ)が息子のウルフ(声:津田健次郎)とヘルムの娘、ヘラ(声:小芝風花)の結婚を要求。これを拒んだヘルムは、フレカを決闘のすえに打ち倒してしまう。かつてはヘラの幼馴染だったウルフだが、父の復讐を果たすため大軍を率い、ローハンへ侵攻。果たしてヘラは、祖国と民の未来を救えるのか。 ■「世界観と映像と音に圧倒されたっていう感じですね」 まさに映画を観終えたばかりの長田を直撃すると、“いまだ興奮冷めやらぬ”といった様子で、本作の圧倒的なスケール感に言及。「いやあ、もうとにかくスケールがすごかったですね。実写なんじゃないかと思わされるほどの超美麗なグラフィックの背景のなかを、主人公であるヘラが、白い馬に乗って駆け抜けていく。あのオープニングのシーンからしていっきに心を掴まれて…。息を呑むほど圧倒されました」と、感嘆しきりだった。 「もともとSF映画やファンタジー系の映画が好み」で、「攻殻機動隊」シリーズをはじめとする神山作品のファンを公言している長田にとって、世界中を虜にした伝説的な作品である「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズと、日本が世界に誇るアニメーション作家のひとりである神山監督とのタッグは、願ってもない産物。想像しただけで「鑑賞前からすでに期待値が爆上がりしていた」といい、期待感を言語化してもらうべく水を向けると、なんとも“言い得て妙”な表現が返ってきた。 「グラタンとコロッケをあわせて、さらにパンで挟んだら、それはもう、絶対美味しくなるよなっていう確信がありましたよね(笑)。その組み合わせなら、もう絶対間違いないって」。そこまで期待値を上げて臨んだものの、結果はそれをさらに超えてきたという。「もう完全にやられましたよね。『ロード・オブ・ザ・リング』という壮大な物語のなかに、神山監督の表現がふんだんに余すことなく表現されていて。世界観と映像と音に圧倒されたっていう感じですね」と語り、その組み合わせのすばらしさを強調した。 さらに、「東の民が出てくる場面で、巨大なゾウみたいなヤツ(ムーマク)が襲ってくるシーンの描写や、沼の主(水中の監視者)との戦いのシーンなんかもめちゃくちゃ見ごたえありましたよね。『実写シリーズに登場したクリーチャーを神山監督がアニメーションで描くと、こんな感じになるんだ!』っていうおもしろさがあって。城壁の装飾とか騎馬隊の鎧の描き込みなんかも、驚くほどに細かくて綺麗なんですよね」と、アニメーションならではの描写にも注目していた長田。 自身も美大出身で、チョコプラの歴代のコントに登場する名小道具の多くは、長田が自ら手作りしているだけのこともあって、その視点は細部にまで及んでいる。「昔から映画を観る時は、その物語の世界観を形作っている小道具とか美術に目がいきがちなところがあるんですが、今回の作品でも、『ロード・オブ・ザ・リング』の世界のコップやデキャンタって、ああいう感じなんだ!って、細かいところがいちいち気になっちゃって(笑)。映画の後半の戦闘シーンに登場するやぐらの構造にも、個人的にはめちゃくちゃ痺れましたね。敵の陣地の近くにやぐらを組んじゃうと、火矢が飛んできてすぐに燃やされてしまうから、ぎりぎり射程距離に届かないところを狙って建てている。でも最後にそれを倒すと…っていうね。そういうところも見ると楽しいですよ」。 本作は、俳優によるモーションキャプチャーの映像を、3Dのキャラクターに置き換え、さらにそれを手描きアニメーションするという、気の遠くなるほどの制作過程を経て作られている。実写のCGを手掛けたWETA社に「ロード・オブ・ザ・リング」三部作で実際に使用した資料を借り、それに忠実にアニメにしていることも長田に伝えると、「うわ、そんな作り方をしてるんだ。すっげえ時間かかってるじゃん!」と驚嘆しながらも、「でも、まさにそういうところですよね。監督のこだわりが見えるのは。神山作品って、『攻殻機動隊』もそうなんですが、SFであっても単なる空想なだけじゃなくて、すべてが理に適っている感じがするんです。『こうだからこうなった』って説明がつくというか」と、神山作品に惹かれる理由を説明する。 「俺らが『キングオブコント』に出場した時のネタの『業者』(ポテトチップスの袋を開封する専門業者が登場するコント)で言ったら、『この業者だったらポテチの袋をクリーニングする機械も当然持ってるだろうな』みたいな(笑)。でも、機械までちゃんと作っているからこそ、あのコントには妙な説得力が出るんだと思うんですよ。ファンタジーの世界ではあるんですけど、説得力がないと醒めちゃうところがあるので。アニメにしてもきっと同じで、これでもかっていうくらい細部まで描かれているからこそ、作品への没入観がさらに増して、その世界をリアルに感じられるんだと思うんです」。 ちなみに、「映画からインスピレーションを得て、コントのネタを着想することもある」という長田。「ネタに関しては『これをやったらおもしろいだろうな』っていうアイデアが突然パッと降りてくるだけで、そこにロジックはあんまりないんですよね。降りてくるか、降りてこないか」。「地面師たち」から「GIVENCHYたち」や「自慢師たち」が生まれたように、『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』からも、驚くようなネタが生まれるかもしれない。 ■「観終わったあと、実写版のシリーズを改めて通して観返したくなるんじゃないかな」 改めて本作について、「『ロード・オブ・ザ・リング』のファンの人も、ファンじゃない人も、両方の角度から楽しめる作品になっている」と、声を大にする長田。「前日譚だけあって、例えこれまでシリーズにまったく触れてこなかったという人がこの『ローハンの戦い』から観たとしても、すごく引き込まれる作品になっていると思うんです。ヘルム王は素手で相手を倒せるくらいバチクソ強いし、角笛を吹くシーンなんかも、実写版を観てきた人たちなら、『あの角笛か!』ってなりますよね。これはネタバレになるのであまり詳しくは言えないんですけど、“白の魔法使い”サルマン”も登場するし、『どこで指輪が出てくるのか!?』みたいなワクワク感もありますよね。『ローハンの地では、200年前こんな戦いが繰り広げられてたんだ』って想像しながら観ると、観終わったあと、実写版のシリーズを改めて通して観返したくなるんじゃないかな。特にローハンがフィーチャーされる2作目、『二つの塔』を観たら、また全然違う感情になると思うので」。 本作は、通常スクリーンでの上映のほか、Dolby Cinema、4DX、IMAXと、多彩なフォーマットでの上映も決定している。映画館での鑑賞を強く勧める理由について、長田はこう語る。「映画は映画館で観るように仕上げられているものなので、ちゃんと映画館で体感しない限り、その作品が持っているポテンシャルのすべてを吸収できないと思うんですよね。それは僕らのネタでも言えることで。YouTubeで観てくださるのももちろんありがたいんですけど、舞台だからこそ映えるネタというのもなかにはあって。そういうネタの場合は、やっぱり舞台に見に来てもらわないと100%は伝わらない。映像であれ、舞台であれ、本来作り手側が意図したフォーマットで受け取ったうえで初めて、それはおもしろいのか、おもしろくないのか判断できるものだと思うから。スマホで観ただけで『つまらない』と言われても…と思うことは、正直ありますよね。 映画館って、スクリーンの大きさだけじゃなくて、音響設備の違いもすごく影響が大きいと思うんです。『ローハンの戦い』に出てくる極寒の地での戦闘シーンなんて、通常版で観ただけでもものすごい寒さが伝わってきたのに、4DXで観たら、どんなことになっちゃうんだろうって。相当厚着していかないとダメですね(笑)。Dolby Cinema やIMAXで観ても猛吹雪のシーンはめちゃくちゃ迫力がありそう。どうやってアニメーションで作ってるんだろうと思うぐらい繊細な描写だったので。IMAXで映画を観るのが趣味の僕としては、この映画もIMAXで観ないわけにはいかないです」。 ■「女性の意識が変わっていく際の表現が、神山監督はものすごく上手な方なんだと思うんです」 特に印象に残った場面として、長田は「ヘラが花嫁衣装を纏って戦いに行くところが、僕的にはやっぱり一番グッときましたね」と本作のクライマックスシーンを挙げつつ、神山監督の作品に多く登場する女性キャラクターの特徴や魅力と絡めながら、ヘラの人物像をこう解説する。「僕が好きな『攻殻機動隊』の草薙素子もそうなんですけど、ただ強いだけじゃなくて、実は可愛らしいところや弱いところもちゃんとある、すごく多面的なキャラクターなんです。自分の抱える弱さにグッと耐えて、だんだん強くなっていく描写が、神山監督が描かれる女性キャラの特徴なんじゃないかと僕は思っていて。ヘラも、最初から戦士だったわけではなくて、最初のほうはちょっとおてんばなお姫様みたいな感じで、周りのお兄ちゃんたちに守られながら自由奔放に振舞っているんですが、そのあといろんな苦難に見舞われて、やがてローハンの国を背負って、敵国に立ち向かっていく。そこに至るまでの感情の変遷というか、女性の意識が変わっていく際の表現が、神山監督はものすごく上手な方なんだと思うんです。今回は吹替版で観ましたが、市村正親さんや津田健次郎さんは言わずもがな、ヘラの声優を務めた小芝風花さんの演技も普段の可愛らしい感じとは違って、戦士としての勇ましさにすごくマッチしてましたね」。 「攻殻機動隊」ファンであり、映画体験を愛する長田も太鼓判を押す本作。ぜひ映画館の大スクリーンで、神山監督が新たに作り出した中つ国の世界を体感してほしい。 取材・文/渡邊玲子
【関連記事】
- 市村正親が全世界での公開規模にびっくり! 映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』ジャパンプレミアで作品への自信をのぞかせる
- 神山健治監督やピーター・ジャクソンら豪華キャスト&スタッフが集結!『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』ファンプレミア開催
- 津田健次郎、映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』ウルフ役は「嫌われながらも愛されるキャラクター」とニヤリ。神山健治監督は「情熱が注ぎ込まれたフィルム」と自信
- イアン・マッケラン、ケイト・ブランシェットも参加!『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』ワールドプレミア
- レゴラスの弓が刺さる感覚も味わえる!?超長尺アトラクションな『ロード・オブ・ザ・リング』SEE版4DXを体験してきた