デマと真実の狭間で揺れた2024年。“半信半疑”の視点が今こそ必要な理由/時事芸人・プチ鹿島
ネット的な煽りや冷笑主義に陥るな
一見牧歌的なスポーツ報道には、オールドメディアの欺瞞が表れていたと指摘する。 「大谷翔平の結婚発表では、『CNNの報道によると』という手法で、パートナーの写真や実名を報じていた。やり方がずるいですよね。報道するなら堂々と自社の責任で報じてほしい。また、パリ五輪に関して日本のメダル獲得に興奮を隠さない姿は、保守系もリベラル系も大同小異。選手に対するSNSでの誹謗中傷やメンタルヘルスの問題を報じておきながら、一方でメダル競争を煽る矛盾した姿勢は、選手にプレッシャーを与え、誹謗中傷を後押ししてしまったのではないでしょうか」 最後に毛色の違う例として、朝日新聞に掲載された読者相談への冷笑的な回答が炎上した件を挙げ、「理不尽を憂う人を小馬鹿にする記者に憤りを覚えた」と語気を強める。 「『世界の理不尽に我慢できない』という相談に対して、タレントの野沢直子氏が『そんなに心配なさっているのなら実際に戦場に出向いて最前線で戦ってくればいい』『そんなことを嘆く前に、今自分が幸せなことに感謝して自分の周りにいる人たちを大切にしましょう』と回答。さらに朝日の編集委員がSNS上で『沖縄に行かれて、本土ではまれな米軍基地と隣り合わせの生活をご覧になればどうでしょう』『あ、この相談者の方はそうした境遇の方なのかもしれませんね。そうでしたら誠に失礼しました』などと追従した。オールドメディアにはそういった冷笑主義に陥ってほしくない。伝統や歴史を生かし、取材をして裏付けをとる訓練を長年している組織はまだ利用できる価値があるはず。ネットニュースのマネをして安易なバズやエモを狙ってほしくないと思いますね」 功罪含めて「オールドメディア」が今を映す重要な言葉となった一年。読者もぜひ“半信半疑”の姿勢を取り入れることで、情報の受け手としてのリテラシーを上げてほしい。 構成/小西 麗 写真提供/産経新聞社 ―[[芸人式]ニュースの疑い方]― 【プチ鹿島】 1970年、長野県出身。芸人、コラムニスト。新聞14紙を読み比べ、政治、スポーツ、文化と幅広いジャンルからニュースを読み解く。著書に『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(双葉社)、『芸人式 新聞の読み方』(幻冬舎)など
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