Getty Images（写真はイメージです）

認知症介護指導者の中島健さんが、認知症の様々な悩みに答えます。 【関連】歯の数80歳で20本より大切？　合わない入れ歯が意外な病気の原因に　専門医が解説

Q．認知症の母（82歳）と同居していますが、最近入れ歯をすぐに外してしまい、家中のあちこちに置きっぱなしにします。毎回探すのも大変で、困っています（50代・女性）

A．入れ歯をすぐに外してしまう場合、今のお母さんの口腔内の環境に、入れ歯が合っていない可能性が高いと思います。高齢になると歯ぐきがやせてしまう傾向があるので、それまで使用していた入れ歯が合わなくなることがあります。歯科医師に相談して、必要であれば入れ歯を補修してもらいましょう。 認知症の方は、歯科医院で「口を大きく開けて」と言われても、なぜそれをする必要があるのか理解できないと、興奮したり、拒否したりすることがあります。口を開ける理由など、1つ1つの工程を説明しながら治療や処置をしてくれる歯科医師だと、スムーズにいきやすいでしょう。訪問歯科もされている歯科医師は、寝たきりや認知症の方を診る機会が多いので、そうしたことに慣れています。歯科医院で無理に手や顔を抑えられたといった経験があると、食事のときにも口を開けなくなるといった方も実際にいるのです。 あちこちに置きっぱなしにしないようにするための対策は、いくつか考えられます。お母さんとしては置きっぱなしにしている感覚はなく、大事なものをしまっているという感覚かもしれません。洗面所の目につきやすい場所に、入れ歯の収納ケースを置いておくと、しまう位置が明確になってあちこちに置くことは防げるのではないでしょうか。 今、入れ歯の洗浄はどなたが行っているでしょうか。できれば本人が洗浄剤に浸けるなど、自分でやるのがいいと思います。実際に利用者の方で、自分で洗浄剤に浸ける習慣をつけたら、入れ歯をなくさないようになったというケースがありました。手続き記憶といって、動作によって記憶したり、思い出したりすることがあります。また、入れ歯を洗浄すると口の中がさわやかになって気分がよくなるので、自分で積極的にやるようです。 お母さんがあちこちに置いた入れ歯を「毎回探すのも大変」ということですが、入れ歯が見つからないとき、相談者や家族が探しているのでしょうか。本人が見つけられなくてどうしても困っているのであれば一緒に探してあげたほうがいいですが、そうではないのであれば、探すのも本人に任せていいと思います。意外と入れ歯なしでも困っていないという高齢の方もいらっしゃいます。 口腔内の状態は、認知症の進行にも関わることがあると言われています。まずは、歯科医師にチェックしてもらいましょう。

【まとめ】認知症の母が入れ歯をすぐに外して、あちこちに置きっぱなしにするときには？

・すぐに外すのは入れ歯が合わなくなっている可能性があるので、歯科医院で診てもらう ・洗面所の目につきやすい場所に収納ケースを置いて、入れ歯をしまう位置を明確にする ・入れ歯を洗浄したり、探したりするのはできるだけ本人に任せる ≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫