ゴジラの伊福部昭「ラストインタヴュー」DVD発売 「精いっぱいの恩返し」と藍川由美
「ゴジラ」の映画音楽で知られる作曲家、伊福部昭の亡くなる3年前のインタビュー映像や、作曲者の意図した方法で初めて録音された「アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌」などが収録されたDVD「伊福部昭 ラストインタヴュー」が5月末にリリースされる。この曲を歌い、伊福部作品に取り組み続けてきたソプラノ歌手、藍川由美は「これが今、伊福部先生にできる精いっぱいの恩返しです」と話す。 ■アイヌと親しく 伊福部はアイヌの人々からの影響を受け、作品に共感があふれている。というのも1914(大正3)年、釧路市に生まれたが、9歳のとき、父親が音更村(現音更町)の官選村長になり、移り住んだ。北の地でアイヌ民族と親しく交わったことが後の作曲家の下地を作った。「アイヌの人たちは宴会などで即興で歌を歌いだすのです。だから作曲を難しくとらえていない」。生前、取材にこう答えている。ちなみに音更はアイヌ語のオトプケ(毛髪が生ずる)から転訛したもので、音更川と然別川の支流がたくさん流れているところからついたといわれる。 収録されているインタビュー映像は、伊福部が学生時代にバイオリンを教えた4人のうち最初の弟子、眞柳潔氏が2003(平成15)年、東京・尾山台の伊福部邸を訪ねた際に録画された。家庭用のホームビデオで撮られているため、画質などは粗い。しかし、このとき88歳の伊福部は元気で、たばこを吸いながら昔話などをしゃべる姿が写っている。 1935(昭和10)年、「日本狂詩曲」でチェレプニン賞を受賞し、世界に知られた伊福部は戦後、東京音楽学校(現東京藝術大学)の作曲科講師に招聘された。「交響譚詩」「シンフォニア・タプカーラ」「リトミカ・オスティナータ」などの作品があり、「ゴジラ」の音楽を担当したのは昭和29年。「ビルマの竪琴」など多くの映画音楽も手がけた。 「藝大で最初のクラスで教えていた人は全部死んじゃった。芥川(也寸志)君とか黛(敏郎)君とか矢代秋雄さんとか奥村一さん、その人たちがみんないなくなっちゃって。石井眞木さんもいなくなった。生きてて悪いような」と弟子たちを回想している。 ■シントコで初録音