外交力強化を狙う「ODA」今どうなっているの?
ODA予算額は右肩下がり
少子高齢社会を迎えて厳しい財政状態が続く中、ODAの予算額は右肩下がりです。本年度ODAに向けられる予算は5502億円。防衛費の約9分の1、公共事業費の約11分の1に相当し、決して小さな金額ではないものの、ピークであった1997年度の1兆1687億円に比べると約半額です。 ただし、有償で貸したお金がもどってきてそれを併せて活用するため、予算が半減したからといって、国際貢献力や外交力まで半減するわけではありません。とは言え、2000年には日本が拠出額1位であったのに対して、2013年度(暫定値)はアメリカ、イギリス、ドイツ、日本、フランスという順になっており、他国が拠出額を増やしていく中で、相対的に発言力が低下する怖れはあり得ます。
「失敗例」や根強い批判も
ODAは、すべてがうまく行っているわけではありません。建設によって深刻な環境破壊が予想されるため、2000年末に住民が来日して政府関係者などに訴えて工事を止めさせた、タイのサムカットプラカンの汚水処理場建設のような失敗例も起きています。「円借款では、円高が進むと資金を借りた国の負担が増えてしまう」という批判も受けています。 また、「自国の財政が苦しいのに、なぜ他国を助けるのか」という批判も根強く、外務省では、「ODAを通じて、とくにアジア地域の経済発展や社会の安定に貢献することは、結果的に日本の安全保障につながる」と説明しています。 ODAは人道上のアプローチとしても、外交手段としても意義が大きいことは事実でしょう。しかし、ODAには光の面とともに影の面もあります。 安倍政権では災害救助などの軍事でない分野に限り、ODAでの外国軍への支援を認めることなども検討しており、年内に新しい大綱を閣議決定する予定です。今後どのように変化していくのか、その動きが注目されます。 (広沢大之助・社会科編集者)