三菱UFJとドコモの新経済圏が始動へ マネックスと連携も視野
「オリーブ」と比べて有利な構図も
そこで先行するのが、三井住友FGが23年3月に始めた個人向け金融サービス「Olive(オリーブ)」だ。スマートフォンで銀行口座、クレジットカード、キャッシュレス決済、共通ポイントなどを一元管理。ネット証券最大手のSBI証券、ネット保険専業のライフネット生命保険の機能も組み合わせたサービスで、口座数は24年7月に300万件を突破した。 オリーブと同等のスーパーアプリの開発を目指す三菱UFJFGがパートナーに選ぶのは、親密な関係を築いてきたNTTドコモだろう。預金や融資、決済といった銀行機能を提供する「BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)」の対象企業だ。ドコモは三菱UFJ銀行の銀行システムを利用して、22年、携帯電話料金の引き落としや給与の受け取りなどでdポイントがたまるデジタル口座サービス「dスマートバンク」を立ち上げた。 ドコモは24年1月、インターネット証券業界3位のマネックスグループからマネックス証券の株式49%を譲り受けて連結子会社にした。三菱UFJFGはドコモの仲介でマネックスGとの協業を狙う。25年1月には、KDDIと共同出資して運営してきたネット証券子会社「auカブコム証券」の全株式も取得。アプリとの高い親和性を生かし、証券ビジネスを一気に成長させる。 何よりオリーブと決定的に異なるのは、顧客基盤が巨大な通信ビジネスを抱え込む構図だ。三菱UFJ銀行の幹部は「モバイル端末を熟知した立場を生かし、アプリを迅速かつ適切にブラッシュアップしてくれる」と期待する。 三菱UFJFGと同様にリテール分野で三井住友FGに出し抜かれたみずほFGは24年、楽天証券に続いて楽天カードにも出資して楽天グループの経済圏に本格的に参入する姿勢を明らかにした。楽天モバイルの経営動向も見ながら、銀行も含めたフィンテック事業全般に提携を広げていく可能性を視野に入れる。 経済圏を巡る覇権争いは激しくなる一方で、これ以上の出遅れは得策ではない。3メガバンクグループで残っていた三菱UFJFGが本格的に動き出す25年は、新たな「もうかるビジネス」の確立を図る金融業界にとって大きな節目になりそうだ。
鳴海 崇